第4話 真剣に衰弱

「よっ。」


「……!!」

どう見ても姉さんだ、霧ちゃんだ。

1年経って、ごりごりのストリートファッションだったのが少し女の子寄りの服になっている。相変わらずタバコは吸っているけど。

「来ちゃった。」

「ご、ごめん……その、連絡わざと返すの遅くしていたんだ。」

「うん、知ってる。」

知ってる、か。

会いに行こうとしてシナに睨まれたり。そんなことで勇気が出なかった僕に奇跡が起こる。


霧ちゃんだ。ああ、霧ちゃんだ……。


本人に言ったらそうだって言ってんじゃん。ってイライラされそうだけど。


それからしばらく2人で裏駅で立つ。

「……あ、まだメビウス吸ってんの?美味しかないのに。」


「……ねえ、姉さん。」

「何?」

「俺、両性愛者なんだ。」

「……。 」


感情を隠しているけどいつも顔に感情が出まくりの霧ちゃんだったのに、今は心底 あっそう。という顔をしている。

「え、それで?」

だから何?ってやつ?怖いよ逆に。姉さんは意外にキャパが広いのかもしれない。

「シナは浮気をしてるよ……。」

「いや、だから何?」

「いや、その……。」

「はっきり言いなよ。」

「シナはっ……。」

「シナ、シナってうるさいよ。もう別れた男の話をチンタラ話さないでくれる?」

「……っ。」

僕は。

こんなにも強い口調で話す女の子より弱い。

本当はすごく脆い女の子たちを踏み台にして生きてきた。

「えっ泣かないでよ、ちょっ……どうしたのよ、ああもう……。」

よしよしって……。

そんな投げやりなよしよしをされても深澤は泣き止まないよ。

「……深澤くんが言いたいことなんてわかってるよ。別に今更だからどうとか思わないし。傷だってついてない。」

「ほんとに?……嘘つかないで。」

「女々しいこと言わんでよ〜。大丈夫ったら。」

姉さんの大丈夫をかっさらうように電車が高速で駅を抜けていく。今の電車はここの駅に止まらない。特急。

「あいつがどっち……というか誰をどう選ぼうがどうでもいいよ。私が残らなかった。ただそれだけだよ。」

「シナもなんだ……。」

「深澤くん……それは流石に言わない方が良かったんじゃない?あいつに許可とったの?」

「取ってない。なんなら会ってることも知らない。」

「おおっ……グズグズ泣いてた深澤くんの割にはやるねえ。」

僕は本当にシナよりも、いがしよりも、もちろん姉さんより小さくて弱くて。



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