第3話 ヤケ ド
「ちょいちょい、待って霧ちゃん。」
女子大生に迫られるのは一般的におっさんにとってウハウハだが、霧ちゃんとなると話は別だ。
「ん?なあに?」
俺の肩に腕を起き目をじっと見つめる。
「ダメじゃないよね?悪くないよね?」
俺の部屋。霧ちゃんは下着姿になろうと上の服をもそもそする。
「悪くは無いけど……。」
俺は若さゆえの過ちをいくつ許せばいいんだろうか。
この子の彼氏。その友達。そして、大事なこの子。
「霧ちゃん、泣かないで……。」
頭を撫でれば撫でるほど目をこれ以上にないくらいうるうるさせる。
「慰めて。」
「これは慰めにならない。いつか負ってることに気づく。」
「傷を?」
「傷ていうか、赤く腫れたみたいな……腫れに気づくの。」
とにかく、腫れ。傷が一見ないように見える。
「店長……じゃ、しないよ……そんなに言うなら。 」
「そうだよ。傍から見るとそういうのはヤケになってるって言うんだ。」
ギュ……
「どした?きり……」
「今はいいでしょ?ギュッてするくらい……。」
若いからって何回許せばいい。
この子の彼氏だった人。この人と体を繋いでしまった人。そしてそれのヤケドを負ったこの子。
ーー
「……僕やっぱり、姉さんに会ってくるよ。」
「は、やめとけよ。アイツ、キチガイって分かってるでしょ。」
「キチガイなんて思ったことないよ。世間から見たら僕達の方がキチガイなんだ。」
今のシナに言ったら1番怒りそうなことを平気で口にできるのはなんでだろうか。
「今、姉さんのところに行かせてくれないならシナとは離れるよ。」
そこで初めてシナが僕と目を合わせる。
「……俺より、あんな女を選ぶのかお前は。」
「姉さんは少なくとも僕のことお前なんて言ったことないよ。」
今日の僕はちょっと強い。
と、勘ぐっていた。
「じゃ、行けよ。」
シナがすっといがしのほうに行こうとする。
「なあいがし、明日の課題って……。」
「シナ!……行かない、行かないから。」
小声で。
「行かないってどこに?」
何も知らないいがしはただ首を傾げる。
「なんでもない、いがし。」
「……。」
シナは密かに口角を上げただけだった。
首筋には他の女の子につけられたキスマークが赤く痛そうに付いていた。
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