第九章 あなたの目で

誰かの目


君の笑顔が好きだったから。

理不尽な自然災害でたくさんのフレンズ達が悲しみ、苦しみ・・・それでも生きた。


スナネコは友の死を受け入れた上で、妄想を現実化させようともがいた。

そして・・・友はそんな自分を望まないだろうと信じ、前を向いてを生きることを決めた。新たな出会い、新たな生活を彼女は徐々に受け入れ成長していくだろう。



プリンセスとマーゲイは、仲間の死を忘却したプリンセスをマーゲイが支えきれないこともあった。どこかの世界では・・・二人で共に終わる道を選んだかもしれない。

しかし、どこかの世界ではプリンセスは自分を思い支え続けたマーゲイに応え新たな夢の翼を得た。

仲間を失ったアイドルと世話する相手を失ったマネージャー。お互いに未だ夢折れたままの片翼かもしれない・・・それでも二人ならきっと羽ばたける。



サーバルは現実を拒絶し偽りの現実を作りだしてしまった。

どうしようもない。回復の為の策が無いと助手に思われていたが・・・必要なのは、ただただ長い時間だった。

そして、ついに”本当の”かばんと対面し、その現実を受け入れることができた。

現実を受け入れることで再び振りかかる悲しみは計り知れないがろうが、それでも・・・きっと先に進む一歩になったはずだ。



そしてここでは語られなかっただけで、他にも多くのフレンズが傷つき苦しんだはず

。でもそれぞれが自分の生き方を見つけて、命を巡らせていったのだと思う。

もしかしたら、・・・生き方ではなく死に方を選んだ者もいたかもしれない。



みんなの世界で生きていくということは、そうやって色んな命が積み上がって・・・絡みあって未来を作っていくことなんだと思う。



・・・・・・これで、フレンズ達の悲しみの物語はおしまい。

どこかの物語で悲しみを背負ったみんなが、どこかの世界では悲しい結末を迎え、どこかの世界では未来を生きることを選んだ。

彼女達はきっとまたどこかの物語で生まれるのだろう。

ヒトがいて、フレンズが存在する限り。



ただ一人、残ったのは命の流れに水を差してしまった一人のフレンズ・・・。

フレンズの身でありながらその枠から逸脱し、ヒトの世界へ踏み込んでしまった彼女は・・・何を望むだろうか。


ヒトの世界の底で叶わぬ贖罪を求め続けるか

自身も新しい命となり物語に生まれ直すのか


それとも・・・・・・何も起きなかった物語を描くのか。



真っ暗な劇場の片隅で泣き続けた助手が、ようやく泣き止んで立ち上がると、てんてんと大きな音と共に舞台の上をスポットライトが照らし出す。



そして、開演のブザーが劇場に響くとゆっくりと最後の幕が上がっていった――

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