第一章 あなたの目で

私の目


あの日。


あの日、パークは未曽有の大地震に襲われた。


それは、サンドスターもセルリアンも一切関係無い・・・

正真正銘の自然による大災害であった。


自然の牙は無慈悲で残酷だった。


パークに残されたかつてのヒトの文明の残滓も、新しくフレンズ達が築き上げた多くの住処も容赦なく根こそぎ削り、崩した。


大きな建物や地下施設、アトラクションのいくつかは無事な姿を残していたが、未だパーク中でラッキービースト達が総動員で修復に臨んでおり、未だ復興の目処など全く立たないのが現状だった。



自然の力は地上で生きる全ての存在に等しく傷跡を残し、その中には命を落とす者も少なくはなかった。


かばんもその中の一人だった。


パークに残ることを選び、サーバルと二人で生きていくことを選んだ矢先にあの大地震が起きた。


二人の家は、プレーリーとビーバーの協力を受け森林エリアの近くに建てられることになった。


それには理由が二つある。

理由の一つは、サバンナの環境がかばんの永住には向かないと判断された為。

もう一つはかばんの知識に対する欲求に、サーバルが気を利かせたからだった。


かばんは図書館に通い、様々な本を読み知識を蓄えていった。


色々な本を雑多に読んでいたが、その中でも特に多かったのが料理の本と建築や家具に関する本、そしていくつかの童話・・・。

これを知るだけでも、かばんがいかにサーバルとの豊かな生活を夢見ていたかがわかる。


その夢は、叶うことなく消え去ってしまったが・・・


しかし、そんな二人の家が大地震が起きても崩れなかったのは奇跡だった。

かばんが建築関係の本を読み、得た知識をビーバー達の技術と組み合わせた結果かもしれない。


だが、それは同時にサーバルの心に生まれた闇に居場所を与えてしまった。

気遣いがすれ違い、呪いを育てる巣箱になってしまった。



温かい生活を夢見たかばんが、自分達の家の今の姿を見たらどう思うだろうか――


しかしその答えはもう、永遠に失われたのだ。

だから死別と言う。それが命を永遠に失うということの意味。


死者は何も語れない、何も残せない。


死者の願いなど、残された者がどう生きていくのかでしか示す方法が無いのだから。

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