第10話
「お前の顔はもう見たくねぇ……エレンやクローゼン領の民の前から消えろ!」
「[一刹三唱]、吹き飛べ! ボクシング流・クロスアッパー!」
[一節三唱]で右腕を強化して、ダリューの顎元に強烈なアッパーを決めた。
ダリューは凄い勢いで飛んでいき、あっという間に姿が見えなくなった。
戦いは終わったと思い、エレンの元に向かう。エレンは涙を流し、俺の胸元で泣き続けた。
それもそうだろう。捨て子だったエレンを拾い、育ててくれたのは事実だ。
俺と同じ歳ぐらいの女の子なのに、父親から殺されそうになったら泣きたくもなるだろう。
するとエレンは泣くのをやめて立ち上がり言った。
「泣いている場合じゃない。捕縛されている友達と平民の人達を助けないと!」
自分のことよりも他人を大事にできるいい子だ。
俺とエレンはダリュー直属の部下達に捕縛されている人達が何処にいるかを聞いた。
最初は口を割らなかったが、拳で脅したらすんなり言ってくれた。
どうやらエレンの家から北にある、建物の地下に捕らえられているみたいだ。
俺とエレンはすぐに向かい、捕縛されているエレンの友達と平民達を解放し自由にした。
俺はエレンの友達と平民達を解放した後、目立つのは嫌なのでエレンに一言言ってから生活拠点に帰った。
作戦の日から二日が経ち、俺は相変わらず修行に励んでいた。
するとエレンと解放した友達の二人で、俺の生活拠点にやってきた。
「テリーさん、友達として遊びに来ましたよ!」
俺は修行を一旦やめて、エレン達二人を向かい入れた。
「あの後、クローゼン領はどうなったんだ?」
エレンは少し暗い顔をして言った。
「実は……捕縛されていた人達を解放したのは伝説の女神様だという話になりまして……」
「まだ、10歳のわたしに領主をしてほしいと街の人達に言われて……」
なるほど、確かに10歳で領主は厳しいよな。それよりも俺より年上だったのか!!
「だからわたしは、友達のクレアと一緒に王都に行って冒険者になろうと思っています」
「クローゼン領の領主はクレアのお父さんになってもらおうと考えています」
話が急すぎてついていけない。領主にはクレアの父親がなって、エレンと友達のクレアの二人が王都で冒険者になるってことだよな?
「ま……まぁ、いいんじゃないかな!?冒険者、頑張ってよ!」
エレンは笑顔で答える。
「はい! 頑張ります!!」
それから、三日後にエレンとクレアは俺の生活拠点に訪れた。
「では、わたし達は王都へ向かいます! テリーさん、あまり無茶をせずに修行を頑張ってください!」
「わたしはフォーテル・クレアよ! 貴方には感謝している! わたしや街の人達を助けてくれてありがとう!」
クレアは深く頭を下げた。
「あぁ、気をつけてな! エレンこそ無茶をするんじゃないぞ!」
エレンは俺と握手して別れを告げた。
「テリーさんとはいずれ何処かで出会えると思います!」
俺はエレンとクレアを静かに見送り、修行を再開した。
ようやくできた、初めての友達だったのでかなり寂しかった。
どれだけ身体を鍛えても、心は8歳のままだ。これからも出会いと別れを繰り返して、心は強くなっていく。
それからは修行をしては寝て、起きたら修行をして寝てを繰り返しているうちに、八年が経っていた。
一人になってからは時間が経つのが早く感じてしまう。
俺の身長はかなり成長して、130cmから180cmまで伸びていた。筋力も8歳の時に比べて、凄まじく強くなっていた。
16歳になった今の俺なら[十刹十唱]まで身体に負担なく使えるようになった。
俺は爺さんから貰った道着を着て、約束通りに爺さんのいる街へ向かうことにした。
この森には世話になったな。13年間の間、この森からは出ずに生活した。
森には沢山の思い出がある。
爺さんと出会い、エレンと出会い……この森に捨てられてなかったら出会えてなかった。
もう一度、戻ってくることを誓い、森を後にした。
そして向かうのは爺さんのいる、グロータルという街だ。爺さんとは11年振りに会うので凄く楽しみだ。
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