第9話

 エレンの家がある、クローゼン領という街についた。平民は笑顔で溢れているが、一部の平民は領主のクローゼン・ダリューに対して嫌悪感を抱いてる様子だ。


 クローゼン領はエレンの父親が領主をしている。領主は表向きで、裏では奴隷売買をしているが、平民達からの支持は高い。


 作戦では、俺がエレンの家の屋根上で待機する。エレンは父親に直談判をして了承がでなかったら俺が突撃する。


「お父様、奴隷売買をやめて友達を自由にしてください!」


「お前はわたしの娘ではない。養子として引き取ってやったんだぞ? わたしに命令をするでない!」


「養子として引き取ってくださったのは感謝しております。しかし、奴隷売買なんて間違っておられます!」


 エレンは父親を説得をするが父親は奴隷売買をやめる気なんてない。


「エレン、貴様に何を言われようともわたしは奴隷売買はやめない。お前の友達だろうと金になるなら関係ない」


「どうせ、奴隷になるのは金のない貧乏な市民だ。いずれ、金が無くなって飯が食えずに死ぬんだ」


 エレンから話は聞いてはいたが、思った以上のクソ野郎だ。今すぐにでも懲らしめてやりたい。


「お父様はそれを本気で言っているのですか? 本気であれば領主失格です」


「もうお父様と話すことはありません!友達と奴隷売買で捕縛された平民達はわたしが解放して自由にします!」


「エレン、わたしがそれを許すとでも思っておるのか? わたしの娘であろうとも容赦はせんぞ!」


 扉が開き、領主直属の部下が入ってきた。領主のダリューは剣を持ってエレンに突きつける。


 エレンは泣きながらダリューに対して言い放った。


「今までお世話になりました。わたしは今日から貴方の娘ではありません! 友達と捕縛された平民達は返してもらいます!」


「エレン、貴様を反逆罪として死刑にする! お前達、この女を捕らえよ!」


 ダリュー直属の部下達はエレンに剣を抜いて、エレンに斬りかかる。


 やはり、父親は奴隷売買をやめることはなかった。それに、エレンにまで斬りかかる。


 俺は作戦通り、[四刹二唱]で両手と両足を強化して屋根をぶっ壊してエレンの前に立つ。


「おい、お前ら。覚悟はできてるんだろうな? 俺は我慢の限界で手加減はできねぇぞ?」


 直属の部下の一人が言った。


「お前みたいなガキに何ができる? 大人を甘く見るなよ?」



 俺は容赦なく、一番手前にいた部下の1人を本気で殴った。


「うぉぉぉぉら!」


 殴られた部下は壁を貫通して、外まで飛んでいった。


「お前らみたいなクソ野郎共にガキだとは言われたくない!」


 他の部下達は引き下がることなく襲いかかってくる。数は多いが個々の力は弱いし、めんどくさいから敵の数が多い時の為に習得した、俺専用の技で終わらせる。


「エレン、魔法で障壁を貼るんだ!」


 エレンは言われた通りに魔法で障壁を貼った。


 炎を拳に纏うイメージをして、地面に拳を叩きつける。


 [炎帝えんてい・グランドブレイク]


 地面は割れて、割れた地面から炎が噴火する。威力はあまりでないが、敵の数が多い時は便利な技だ。


 部下達は噴火した炎で焼かれ、割れた地面から落ちていく。


 ダリューは膝から崩れ落ちた。


「なんてことだ……こんなガキ一人にやられるとは」


「後はお前だけだぞ、クローゼン・ダリュー……」


 ダリューは立ち上がり、杖を持つ。


「わたしは魔法使いだ! 貴様の様なガキなど、一撃の魔法で終わらせてやる」


「くらえ! [雷]魔法・[豪雷ごうらい]」


 空から俺に向かって雷が勢いよく、降りかかる。


 俺は即座に[四刹二唱]から[一刹四唱]にチェンジして、右足だけを強化した。


 [豪雷]を右足で思いっきり蹴り上げた。蹴り上げた[豪雷]は、空の雲を突き抜けて消えていく。


「今のが攻撃魔法か? 思っていたよりも軽いな」


 ダリューはかなり驚いた様子だった。


「き……貴様何者なんだ!? 魔法を蹴るなんて聞いたことないぞ!」


「答える義理はない……お前だけはもう許さない!」


 俺は拳を握り、ダリューに殴りかかる。

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