第11話

 爺さんのいるグロータルは、俺のいるジュラルの森から東の方にある。


 そして、グロータルとジュラルの森の丁度中間には、コロシアム闘技場が有名なウルホルスという街がある。


 グロータルに行く前に資金調達の為に闘技場へ出るつもりだ。ルールは5人のチーム戦で、1人で出ることも可能らしい。


 しかし、馬車も移動魔法も使えないので歩いて行くしかない。だが、普通に歩いて行くと二週間はかかってしまう。


 爺さんには早く会いたいし、[刹]魔法で両足を強化して、走って行くことにした。


 とりあえず、移動だけなので[二刹三唱]ぐらいで充分だろう。これなら、三日もあればウルホルス街に着く。


 最後に13年間、世話になった森に別れを告げて、動物の皮で作った鞄を担いで、走り出す。


「よし、行くか!」


 向かっている途中で休憩や食事をしながら、少しずつウルホルス街に近づいていく。


 食料はジュラルの森から調達した木の実や動物の肉などを、鞄の中に入るだけ詰め込んだ物を適当に食べる。


 一日目は順調に進み、食事をして雨が降っても大丈夫な様に洞窟の中で眠る。


 朝になると食事をしてからまた、走り出す。無茶をしないように休憩や食事をしながら進んでいく。


 13年の間、クローゼン領以外では森から出ずに修行をしていたのでかなり新鮮に感じた。


 順調に進み、ようやくウルホルス街に着いた。


 ウルホルス街は大きな城門があり、入るには身分証を提示しなければならないが俺には身分証はない。


 入る方法はもう一つある。それは、城門にいる兵士にコロシアム闘技場の参加をしにきたことを伝えればいい。


「すいません、身分証はないのですがコロシアム闘技場に参加しに来ました」


「ん? お前みたいな弱そうな奴が闘技場に出るのか?」


 兵士は笑いながら俺のことをバカにする。


「はい! 一生懸命、修行しました!」


「ははっ、そうかそうか。お前、職業は何だ?」


「武闘家をしています! 魔法は一切、使えません!」


 兵士は高笑いして俺を侮辱する。


「ギャハハハ! 武闘家で魔法を使えないなんて、完全に負け組じゃねぇか!」


「お前みたいな弱い奴が出れる様な闘技場じゃねぇ! さっさと帰んな!」


 兵士は俺を邪魔者扱いをして煙たがられた。


 俺は戦ってもないのに弱い者扱いされるのは気に入らない。


「おい、俺は弱くなんかない! 戦ってもないのに決めつけるんじゃねぇよ?」


 兵士は笑うのをやめて立ち上がり、剣を抜いた。


「武闘家で魔法も使えない奴が強い訳ないだろ? 帰らないなら少し、痛い目に合わせるぞ?」


「ガタガタ言ってないでかかってこいよ? 兵士様は強いんだろ?」


 俺は兵士を挑発して戦いに誘い込んだ。一度、戦って勝ったら城門を通してくれると思ったからだ。


「貴様ぁ、殺してやる!」


 兵士は物凄い勢いで近づき、剣で斬りかかってくる。まぁ物凄い勢いと言っても俺から見ればかなり遅いんだがな。


 兵士の懐に飛び込み、顎を狙ってアッパーを決めた。兵士は一発で気絶したが、散々バカにされてイライラしたので鎧を掴んで背負い投げで倒してやった。


 周りにいた人はあまりの速さに何が起きたのか分からずにいた。


 俺は面倒なことには巻き込まれたくないので、嘘で乗り越える。


「あぁ怖かった。兵士の人、転けて気絶するなんてビックリした!」


 周りの人を見事に騙すことができた。


「なんだい! 転けて気絶したのかいな!」


「兵士がこんなので、この街は大丈夫なのぉ?」


「転けて気絶とか、ダッセェェェ」



 俺は心の中でガッツポーズを上げた。


 そして俺は無事?にウルホルス街に入ることができた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る