第18話 文句あのんかよ?
あれから数年の月日が経った。
高校を卒業し、三流ではあるが私立の大学にも入学した。そして、なんとかその大学を末席ではあるが卒業する事ができた。
俺は、大学で教職課程を履修して高校教師になる道を選択した。
友人や、知人からは学生時代み身近にいた教師が、あんな事件を起こしたのに、よくその道に進む気持ちになったものだと呆れられた。
初めて、赴任したのは日本海に面した過疎化の激しい町の高校であった。
そこでは、それなりに充実した日々を過ごし教師としての自信をつける事ができた。
そして、数年間の時を経て、俺はあの母校に赴任する事になった。
別に希望をしていた訳ではなかったが、その縁に驚愕した。
年月が経って、俺も一端の大人になり、あの頃喧嘩ばかりしていたのが懐かしい。
昔、通った通学路。
相変わらず、あの桜の木が雄大に立っている。その桜の木の大きな根の辺りに目を移す。
そこに、白い服を着た小さな女の子が座っているような錯覚にとらわれた。
もう一度、目を凝らしてみたが、そこには誰もいなかった。
受け持ちのクラスに入り、生徒たちの出席を取る。
俺の受け持ちは、日本史の授業。
生徒たちの様子を確認するように、教室を歩きながら講義を始める。
窓際の一番後ろの席、居眠りをする女子生徒がいた。
俺の初授業で、いきなり居眠りしているとは、図太い奴だ。
「おい、起きろ!授業始まってるぞ!」少し強い口調で注意する。
しかし、少女は無反応であった。
教室の生徒たちが、ヒソヒソと話をしている。
俺は少し飽きれて、少女の寝ている姿を見つめていた。
「何をジロジロ見ているんだ!文句でもあんのかよ!」
少女は俺の顔を見て悪態をついた。
[ 完 ]
AYA 上条 樹 @kamijyoitsuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます