第14話 ゲス
朝になり清々しい気持ちで学校へ行く。
また桜の木の近くで、逆瀬川と目が合う。
彼女は少し赤面しながら優雅に髪をかきあげる。
その姿とデブゴンが重なり、俺は思わず爆笑してしまう。
「な、なんですの!」そう言い残すと、逆瀬川は逃げるように歩みの速度をあげて遥か彼方へ姿を消した。その様子を見て、また笑いが込み上げてきた。
「なんだか楽しそうだね」服部が声をかけてきた。
「ああ、おはよう」俺は目尻から溢れる涙を人差し指で、拭いながら挨拶をした。
「おはよう」服部は俺の歩く速度にあわせて横を歩いた。
「三国君は、すごいよね。あの庄内もギャフンと言わせたし、逆瀬川さんも……、あんな顔をした彼女は見たことがないよ」なんだか服部は嬉しそうな顔をした。
俺には、特に生徒会を敵に回したつもりなど無いのだが、なんだか周りが変に盛り上がっているようである。
「生徒会って、嫌われてるのか?」俺は疑問をぶつける。
「うん……、あくまでも噂だから大きな声では言えないけど、生徒会長もたいがいみたいだから」服部は手で口を覆い小さな声で、俺の耳に囁いた。
「たいがい?」どういう意味か、よく解らなかった。
「ああ、自分の気に入った女の子を、生徒会室に連れ込んで……、あくまで噂だけどね」言いながら服部は鼻の穴をバフバフ広げている。
「ゲスだな……」俺は吐き捨てるように言った。
「ショックで転校していった女子もいるようだよ」服部は付け加えた。
話を聞いて、この学校はろくな奴が居ないと思った。
「そういえば、昨日商店街の辺りを一人で歩いていたね」
「えっ、昨日は……」たしか綾と二人でペットショップ、ハンバーガーショップに行った。
服部達は、俺達が二人でいたことに気がつかなかったようだ。
「ああ、ちょっとな……」いちいち説明するのも面倒で、あやふやな返事で誤魔化す事にした。
「あっ、そう言えば、こんな事をいうのもなんだけど、みんなで話していたんだけれど、三国君って、けっこう独り言が多いいよね。」俺は自覚が無いのだが、服部が少し心配そうに言った。
「えっ、そうか......、気をつけるよ」そう思われているのであれば、直さないといけないなと思った。
教室の中に入ると綾の姿は見当たらなかった。
その日は一日中、綾は休みであった。
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