第13話 猫と記憶
「ただいま」家に到着した。なんだか気分は上々である。
「お帰りなさい。ご飯食べるよね」母が当然のように聞いてくる。
「あっ、ごめん、途中で買い食いしたから、遅めに食べるよ」夕食の用意をしてくれていたのは分かっていたのだが、成長盛りの胃袋は抑えられない。
「ひとりで食べてきたの?」友達が出来たのか心配しているようだ。
「あ、いや、綾ちゃんと久しぶりにあってさ」俺は、嬉しくて誰かに綾の事を話したい気分であった。
「あっ、綾ちゃんってあの太った女の子?」どうやら、母が言っているのは逆瀬川の事のようであった。
「違うよ、神崎綾のほうだよ」俺は、デブゴンの事を思い出して、少し吹き出しそうになった。
「あ、ああ、神崎さん......。ああ、あの可愛らしい子ね。懐かしいわね。私もあそこの奥さんとよくランチしたものよ。今度、挨拶にでも行こうかしら」母は、懐かしそうに言った。綾の名字を覚えていたようだ。初めから母に聞いていればよかったと一人苦笑いしてしまった。
「すごく雰囲気が変わっていて、初めは全く気付かなかったよ。でも、ちゃんと話すとやはり、綾ちゃんだったよ」今日一日一緒にいて、上手くは言えないけれど綾の変わってない、女の子らしい部分も見つけられたような気がした。これから日々を重ねていけば、その気持ちは更に強くなっていくだろう。
「そう、それは良かったわね。そういえば、あんた達よく遊んでいたのものね」母は夕飯の準備を始めたようだ。
「先に、風呂に入るよ」俺は階段を上がり自分の部屋へ向かう。
「あっ、風呂釜洗っといてよ」キッチンから、顔を出して母が指令をだした。
「あいあい」俺は、上機嫌で返答した。
ニャー、ニャー
俺のベッドの上で黒猫が鳴いている。先日、拾った猫。名前をにゃん太郎と名付けた。命名は綾によるものであった。
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