完璧な街
春風月葉
完璧な街
全ての行いは正しく平等に評価されるべきだ。その街では全ての正しさが認められ、全ての誤りが裁かれる。
この街で産まれた子供には数字が与えられる。そして子供の左目には小型の監視カメラが取付けられる。この街の住民は皆、この数字によって管理され、このカメラによって監視し、監視されている。監視カメラを通して人工知能が私達人間を一人ずつ平等に評価し、それを数値として足したり、引いたりしている。そうして必要な人間と不必要な人間を正しく選択し、不必要なものを消していく。
この街は小さな牢獄だ。誰もが他人の目を気にして生きている。私に暴行を加えようとした父親は振り上げた拳をぶらりとだらしなく地面に垂らして泣き喚く私の目の前で死んだ。私を捨て、父親から逃げた母親ももういないだろう。この街で数値がゼロになることは、生きる必要がないと判断されたいうことだ。すると左目のカメラから脳に電流が走り人からゴミに変わる。そうやって必要な人間だけが残った。
今の私はこの街に不必要な人間だと判断されている。それもそのはずだ。両親のいない無力な子供、自分では働くこともできない。家の鍵を閉め、部屋の扉を閉じ、カーテンとして、真っ暗な部屋の布団に包まってカタカタと監視の目に震えている。
私の数値は日に日に減っているだろう。理不尽だ。私は悪くない。母親が勝手に捨て、父親が勝手に死んだ。私にできることなんてあるはずがないのに。
ふと、鏡にうつる自分と目が合った。その左目から人工の赤が光る。私はすぐに鏡から目を離した。こんなモノがあるから私が怯えなくてはならないのだ。私はこの目を抉り取ろうと考えた。日記の横に置いていた黒いペンを手に取り左目に当てる。ブン、と腕を振った瞬間、パチンという音が頭の中に響き、私は消えた。
完璧な街 春風月葉 @HarukazeTsukiha
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