第4話俺、ギルド学院に入学する。
魔王都の冒険者ギルドにたどり着く。
『砂塵の輩』はただの輩じゃなかったらしく、何組かのパーティーがすれ違うたびディックさんに挨拶していく。
「そりゃそうだ。うちら『砂塵の輩』はCクラスパーティー、ディックさん単体でBクラスの冒険者だからね。」
…正直どう凄いのかわかってないよ俺。Aとか、Bとか
最初に言い出したのは 誰なのかしら…
「ほら、あのチラシをよく読んでカウンターで申し込みな。」
ふむ。ギルド学院は一年制で全寮制。成績優秀者は授業料免除。卒業と同時にDランクの資格が与えられ就職に有利。試験は技量チェックと魔力操作。本年度の試験日は…
「◯の月×日って…?」
「うん明日だな。」
ぎゃあああああ
駄目じゃんっ受け付けなんて終わってるでしょ‼︎
「あ、大丈夫ですよー。今日まで受け付けてます。」
窓口のお姉さんがにっこりと語る。
マジすか!あいまいだな魔王都‼︎
急いで書類に必要事項を記入して窓口のお姉さんに提出する。
「ふむふむ、…ユート=モンマさんですね。あら?性別男になってますよ?」
「えっ…あの…」もごもごしてとっさに返せない。
「修正しときますね…はい受け付け完了しました。
明日朝8時にギルド学院にて試験です。ちゃんと会場をご確認下さいね。」
流れるような事務手続き。
おおおおお…修正されてしまった…【女性】に‼︎
項垂れつつギルドを出ようとするとディックさんに呼び止められる。
「待て待てユートちゃん。ほいキミの取り分だ。」
金貨が数枚銀貨が十数枚入った袋を渡される。
「これは?」
「キミがこの旅で倒した獲物を売ったお金と盗賊団討伐の代金。」
「あ、ありがとうございます…」
「それとだな、今夜は俺たちの定宿に一緒に泊まれ。学院から一番近い宿だから迷う事もない。」
「…お世話になります。」
ああ、ディックさん…惚れちゃいそうです。俺が女だったら抱かれてますよ。
人の情けが暖かい…
その日は『砂塵の輩』の定宿【熊殺し亭】に泊まった。
名前とは裏腹に食事とスイーツが美味しい店であった。プリンに似ていたがどんな世界にも似たような食い物があるんだなぁ。
翌日。みんなにお礼を言って試験会場に向かう。
ちゃんと受け付けは通れて中に入れた。うわ人が多い。獣人、ドワーフ、エルフ、鬼、魚人、人間…いろんな種族がいる。
来てわかったけど試験内容は適正チェック。相撲の入門審査的なものでこの段階で落ちるのはまずないらしい。
丹田に気を回してぐるぐる。ほら魔力が巡ってる。
エルフの里でやって見せたように火・水・風・土・雷と魔法を次々と放って見る。
んー? なんか周りが静かだな。
ちゃんと見てんのかな? 目見開いて固まってるな。
…落ちたりしないよな?
合格者はその日のうちに発表。 無事合格していた。ホッとしたぜ…
入寮手続きもその日のうちに済ませる。明日にも入寮可能だそうだ。
やったね、無駄に宿代重ねなくて済む。
一旦『熊殺し亭』に戻り、『砂塵』のみんなに合格を報告。するとディックさんが夕食を奢ってくれると言う。
「気にすんな!後輩になるんだからよ!」
笑顔が眩しいディックさん。ステキ。
翌日、本当にお世話になった『砂塵』のメンバーにお礼を言ってお別れする。
「がんばれよ!また会おう!」
「はい!」
魔王都の東寄りの森の近くにギルド学院はある。
指定された学院寮に入る。立派な煉瓦作りの建物だ。今日からここが新しい住処か。…ん? 周りを見ると女子ばかりなんですけど…
寮監さん? そりゃそうよ女子寮だもん。…て。
ああああ!女子寮に入れられてしもうた‼︎
あー。女子かぁ。俺この学院では女子なんだな。滅多に男に戻れない訳か…
項垂れつつ割り当てられた部屋に入る。四人部屋らしい。
一人女の子が先にいた。鬼…の子のようだ。
「は、初めましてでござる。それがし、レンと申す。鬼族の者でござる。」
ござる?
「俺はユート。よろしくね。」
「おっおっ、俺っ娘⁈ キマシタワー‼︎」
途端に気色ばった笑顔と黄色い声で反応する鬼っ子。
なんか近視感ある。クラスメイトにこういう子居たな。自分の事拙者とか我輩とか言っちゃう女子。
唖然としているとドアが開いて新たに女の子が入ってくる。
赤毛のちんまりした女の子だ。10歳くらいに見えるがギルド学院は13歳以上だから13にはなってるんだろう。瞳に特徴がある。黄金色の虹彩。縦に黒い瞳孔。いわゆる龍眼だ。
品のある立ち居振る舞い。育ちの良さを感じる。
そして高らかに宣言する。
「お初にお目にかかる。妾はリィカ。誇りある龍の血族である。愚民共よお前達には妾の側付きを許す。光栄に思うように! くはははは‼︎」
ごすん! いきなり殴られる龍っ子。
後ろにメイドらしき猫耳眼鏡女史が立っている。猫耳がヒクヒク動いてる。猫獣人って事か。
「なんですかそのご挨拶は!お嬢様、ご同室のご学友は側付きメイドではありませんよ‼︎」
「いたいぞミヤマ」
ミヤマと呼ばれた眼鏡女史は俺らの前に頭を垂れる。
「失礼を致しました。ご同室の皆様、我儘にお育ちになられたリィカお嬢様ですが心身ともに頑丈ですので多少乱雑に扱われてもかまいません。よろしくお願いしますね。」
「は…はあ」
猫耳眼鏡女史はまだ頭をかばっている龍っ子に向かって
「お嬢様、ご学友にあまり我儘を仰られると嫌われてしまいますよ。しっかりお勉強なさってくださいね。私はいつでも見ていますから。では。」
言うだけ言ってふっと消えた。消えた⁈忍者か⁈
龍っ子は1人になるとなんか恥ずかしいのかモジモジし始めた。
「…リィカじゃ。よろしく頼むのじゃ。」
照れながらご挨拶。うむ可愛い。思わず撫でてやる。
「な、な⁈」
「あ、ごめん。俺はユート。エルフっぽい何か。よろしくね。」
「拙者はレン。鬼族でござる。」
どうやらこの部屋は三人部屋らしい。ベッドの位置を割り振り、居場所を決める。龍っ子は特に我儘を言わず大人しく従っている。良い子じゃん。
食堂、浴場、トイレを確認。授業は明日から。
時間が出来たな。暇なんでボックスの整理をしようか。とにかくなんでも突っ込んでここまで来たし。一応成績優秀者を目指すが保険として学費分は何とか捻出せねばなるまい。
学院内には生徒が依頼等で手にした素材を買い取るギルド分店があるそうだ。行ってみよう。
本校舎内のギルド分店は大きい解体場が併設されているのですぐわかった。
「おっちゃーん、買い取ってー。」
おっちゃんはいなかった。職員は全員女性だった。
妙齢のおばちゃん達ががっすがす獲物を捌いてた。
「なんだい失礼なエルフの嬢ちゃんだね。何の用だい。」
怒らせてはいけない。深々と謝る。ごめんなさいお姉さん。
「狩った獲物と素材を買い取って欲しいんだけど。」
「どんなの?捌いてあるの?」
ムスッと答える妙齢のお姉さん。
まだ解体を覚える前の獲物が山盛りだったな。
「未解体の魔熊とか魔猪とかワイバーン。」
「ワ、ワイバーン⁈」
「うん。」
全部【ボックス】から出す。魔熊が5、6体、魔猪が15体、ワイバーンが3体。あとは…
「ま、待って待って!」 おばちゃん仰天。
「ち、ちょっとみんな、手を貸しておくれ!ヤバい奴が来たよ‼︎」
「なんでワイバーンなんか抱えてんだい‼︎こんなのCランククエの獲物だろ‼︎」
ヤバい奴って…他のおばちゃんらがわらわら寄って来て鑑定を始める。みんな笑顔じゃん。なんで嬉しそうなの?
聞くとここは学院だから大抵FランクEランクの小型魔物(ウサギとかオオカミとかダンゴムシとか)ばかりでこういう大物は滅多に回って来ないそうだ。なるほど。まあ喜んでいるならいいか。
「ちょっとあんた、どれもこれも狩ったばかりみたいな鮮度じゃないか!どうなってんだいあんたのボックス⁈」
うん、時間凍結してるよ? そういうものじゃないの?【ボックス】って。え、違うの?大抵ただの収納箱?たまに冷凍できる人がいたりするの?へー…。個人個人違うんだなぁ。
ん、ワイバーン最初の一体をサンダーブ◯イク…いやエルフブレイクで黒コゲにしちゃってますね。価値が落ちますか。ふむふむ。反省。
他には鹿の角とかエルフの里のキノコとか薬草の原料とかぽろぽろと提供してみる。
幾ばくかの食用肉は貰って【ボックス】にしまう。料理用だ。そういや売った素材が高いのか安いのかわからない。物の適正価格も把握しとかないとなぁ。
その内街に買い出しに行こう。
【ボックス】もスッキリして新たな気持ちで新生活だ!
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