某日記
某名無
第1話
冬と光と
キュウゥと高い音が耳元に届いて、耳をおさえてそちらを見たが何もない。それが吹き荒ぶ風の音だと気付いただけで体温が少し下がったように思った。
側から見れば馬鹿らしく見えるだろうが、私は今、雨とも霙ともつかない何かの中、遮るもののない橋の上を傘も持たずに歩いて渡っている。
風景が銀鼠色をしている。とても寒い。けど別にこの状況を嫌いはしない。こういう状況が好きなんだ私は。
目に入る霙を払いながら上を見上げる、雲の様子を眺める。もうすぐだろうとわかる。
強風のおかげで歩みは遅くなる、霙は雪になり更に強く降り頻るからもう簡単に上は向けない。
アスファルトのみに視線を注いでいると、少しだけアスファルトの色が変わった、銀鼠のフィルムを剥いだように、日の色が差している。未だ雪は止まないが、その重さが和らいでいる。
雲の厚さが変わったのだ。側の車道を通り過ぎる濡れた車の表面や、橋の欄干を光芒が照らしていく。
その光が好きなのだ。この光は冬にこそ1番きれいに見える。
この雲の様子だと、きっとすぐにまた雲が戻るだろう。風が強くなるのを感じながら、橋の終わりへ向け私はまた足を動かした。
某日記 某名無 @soregasi1872
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