コンセント 

いーぜろ

アース伝説

 むかしむかし、世界では「コンセント」なるものの存在が信じられていたそうな。そこから生み出されるエネルギーというもの、暗がりには明かりを灯し、冬には懐を温め、世界には豊かさを与えるといわれたそうな。人々はそれを見つけるべく、山脈を越え、荒れ狂う急流にも耐え、先の見えぬ大海を超え、地平線の彼方へと旅を続けました。


 でもそれはでんせつのもの。人間たちにはコンセントを見つけ出すことはかないませんでした。

 そんな様子に見かねたかみさまは、にんげんたちに「コンセント」を授けることにしました。ある日、とあるむらに天から白い物体がゆっくりと降りてきました。村の者たちはわになってそれを崇め、ひざまずいたのでした。

 すぐにコンセントは王宮に運ばれました。その白い物体には、ふたつの細長い穴があいていて、なぜか片方だけ少し長くなっていました。くにのけんきゅうしゃは大慌てでそのわけを考えましたが、わかりませんでした。よくわからないので、とりあえずおうさまが使ってみることにしました。おうさまはその大いなる力を解放するはずでした。でもコンセントはうんともすんとも言わず、そこにたたずんであっただけであした。おうさまは怒りました。あれほど待ち望んだコンセントが使いようになりませんでした。おうさまはすぐにコンセントが見つかったむらを消すよう命じました。

 むらは焼け野原になりました。そこからの煙はもくもくとあがっていって、くにに雷のあめを降らせました。たくさんの家がもえました。王宮もこわれました。おうさまはもうだめだと思いました。

 でもそんなとき、こわれた王宮から、うしなわれていた予言の書のもうはんぶんが見つかりました。どうやら「コンセント」のほかに、「プラグ」なるおそろしい魔道具のそんざいがわかりました。どうやらその「プラグ」なる魔道具は、なわのような見た目で、雷のみちを作ることができるものでした。そして、コンセントとどうじに使うことにより、真の力をはっきできるのだとわかりました。

 にんげんたちは雷にやれたくらいでは諦めませんでした。予言の書をさいごまで読むまえに、すぐにプラグを取りに行く準備がされました。

 へいしたちがやってきたのはおおきな湖のほとりです。ここはみんながこわがる、きょだいかまきりのすみかです。人くらいあるおおきな鎌で、いろんな生き物たちをたべてしまいます。寝ているところをおそうけいかくでした。でもざんねんなことに気づかれて、なんにんか食べられてしまいました。それでもなんとかして湖にしずめて倒しました。するとどうでしょう、しずめたかまきりの背中から、にゅるにゅると黒いひもが出てきました。よくみると先っぽの方だけでこぼこしていて、そこから二枚の板がとびでています。絵に描いてあったとうりのものだったので、へいしたちはすぐにこれがプラグなんだと思い、王宮にもちかえりました。 

 おうさまはとっても喜んで、へいしたち全員に「きし」のしょうごうを与えました。それから、「コンセント」と「プラグ」のおひろめかいのために、くにじゅうの人たちを集めてきました。

 いよいよおひろめかいです。広場はひとでぎゅうぎゅうです。誰もがおうさまの手元を見て、いきをのんでいます。そしておうさまはその手をゆっくりと、ゆっくりと近づけ、プラグをコンセントにさしこみました。

 そのしゅんかん、「ぱちっ」という音をたてて、明かりがともりました。広場にいたひとたちは声を上げておどろきました。歓喜につつまれました。その日はすっかり元どうりになったおうきゅうで、よるまで宴会をしました。もちろんその明かりでしました。

 「でんきゅう」が作られました。よるまで明るくできて、かぞくで過ごすじかんがふえました。「せんたくき」が生まれました。もうおばあさんは川へいかなくてもよくなりました。おかげでへいきんじゅみょうがのびました。「こたつ」が生まれました。おかげでみかんがおいしくなりました。「でんしれんじ」が生まれました。いつでもあったかいごはんが食べれるようになりました。みんな幸せです。


 なんねんかたちました。今日もおばあさんはせんたくきへと服をほうりこんでいます。今日はあめです。遠くでごろごろとなっているのが聞こえているので、おじいさんはへやの中です。

 そのときでした。ぴかっと空がまっしろになって、いえのすぐそばにかみなりが落ちてきました。おじいさんはおどろいて跳びあがりました。そして心配になっておばあさんのところへいきました。

 あばあさんはせんたくきの前で倒れていました。おじいさんが声をかけてもへんじはありません。ゆっくりと体をおこすと、あばあさんは手から足にかみなりがおちたようにやけこげていました。おじいさんは泣きました。いっぱい、いいっぱい泣きました。水たまりはどんどん大きくなっています。

 そしておじいさんのなみだがせんたくきまで広がったとき、おじいさんは気づきました。あしがびりびりしています。プラグは雷のみちを作るものでした。おばあさんはプラグからとび出てきたかみなりにつらぬかれたのでした。

 それからというもの、おじいさんは悩みました。また、いつあんなことが起きるかもわからないのでした。なんねんもおじいさんは考えました。けんきゅうしました。そしてついに思いつきました。おじいさんはコンセントにもうひとつ、ちいさな穴をあけて、そこからほそい線でじめんとつなぎました。これならもしかみなりが来てもじめんににげてくれます。

 おじいさんが考えたこのことは、すぐにせかいじゅうに広まりました。もうあんなじこは起きなくなりました。おじいさんはそれであんしんしたのか、いつの日かこたつで眠りにつきましたとさ。

 そして、いつかかみなりが落ちたあのばしょには、ひとつの墓があって、おじいさんとおばあさんがなかよく眠っているのだとさ。


 むかしむかし、世界では「コンセント」なるものの存在が信じられていたそうな。でもコンセントは危険で、事故で死んでしまう人もいたんだと。そこでとあるおじいさんが「アース」なるものを作ったことにより、もうそんな事故は起きなくなったのだそうな。


 これがのちの時代に受け継がれる、「アース」伝説であるとかないとか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コンセント  いーぜろ @E-zero

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ