エピローグ

 人生で一番、大切なもの?

 決まっているさ、運だ。

 俺はただ運が悪かったんだ。

 へし折れたクロスボウが自分の頭にぶつかったのも、それで俺が気絶したのも、村の兵士が駆けつけてきたのも、先にバッカスが目を覚ましたのも、全て運が悪かったんだ。


 なぁ、どうして人間というのはこうも頭が悪いんだい?

 確かに俺はクロスボウを持っていたさ。でも、それはクロスボウに見えるだけの翡翠だろ?

 さらに真っ二つに折れたそいつは、もはやクロスボウですらないじゃないか。

 どうして俺が……レクシドを射殺したことになるんだよ……!?

 俺は被害者だ……!バッカスと、レクシドと同じ……俺も被害者なんだよ……!

 神に弄ばれただけの、ただの……!


 ……あぁ、やっと見つけたよ。俺がこの世界で最初に口にした果実……俺を毒殺しかけた例の果実だ。

 ようやく分かったんだ、神の石の正体……!神の石を作ったのは……やっぱり俺だったんだ……!

 みずみずしさと迸る甘さは、あの頃と変わらない。

 目の前が歪んで、何重にもぶれる。これもまた、変わらない。

 そうだ、この視界のが答えだ。

 体が崩れ落ちた先に転がっていた一つの石……その石がぶれて見える。

 一つ、二つ、三つ……!

 『アジアン千金・ミラクル』……七重にぶれた石を全て、別々の宝石に変えるんだ。ルビー、サードオニキス、アンバー、エメラルド、アクアマリン、サファイア……!


 神の石……あれさえあれば……ガブリエラ……もう一度……あいつを協力させて……!

 濡れ衣を……ララを……!

 あ……!

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