籠の外12
「すみません、ではお言葉に甘えて」
小さな少女に向かい改めてお礼を言うと、後ろでシュガーが悲鳴を上げた。
「ななな何だコレ!!!口の中で消えたぞ!それにすっげー甘い!!オイラこんなご馳走初めてだ」
どうやら受け取ったチョコレートを早速食べてしまったようで、口元の毛を茶色く汚して嬉しそうに飛び跳ねている。先程ウサギがチョコレートを食せない事を説明しようとしたのだが・・・時すでに遅し。
まぁ、調子を崩す所か寧ろ絶好調のようだし黙っておくとしよう。
「ふふっ、そんなに喜んで頂けるなんて思いませんでした。よろしければもう一ついかが?其方の方も、この街のスイーツは絶品揃い、折角旅の風で結ばれたのですから試して行かれるとよいでしょう」
少女から手渡された包みを開くと中には小さく光る黒い粒が一つ。雫型のそれは表面に金の飾り模様が器用に施されていて、口の中をあっという間にカカオの芳ばしい香りと優しい甘さで満たし、その後からオレンジの爽やかな香りが涼やかな風となって吹き、鼻まで楽しませてくれる素晴らしいショコラであった。
「オイラ、シュガー!こっちはコウジだ、よろしくな!」
ショコラの出来に感動している間にシュガーは再び少女の前に立っていた。それも俺と会った時と同様に右手を出して握手を求めている。俺は背筋が凍った。母娘は身なりや振る舞いからも高貴さが伝わってくる上、このショコラも高価物の筈だ。気安く握手を求めていい身分差では無い!しかし、何を思ってももう時すでに遅しでしかない!
俺と同様に少女の後ろに立つ夫人が分かりやすく不機嫌な表情を浮かべ、少女とシュガーの間に割り込もうとすると、それを止めるように少女が小さな手のひらを上げて夫人に向けた。
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