第86話 馬鹿で最高な言葉

「坂下先輩ってすごいよね」

「すごいよね、坂下先輩って」

「うん、かっこよくて運動もできて、それに坂下先輩って頭もいいんだって」


 坂下先輩とはこの学校ではとても有名な先輩で、顔良し、性格良し、運動神経良しと女子からかなりの人気がある先輩で、実際女子の付き合いたいランキングトップに君臨している学校の王子様みたいな存在である。


 でも当の先輩は今までたくさんの告白を受けてきて誰一人とオーケーを出していないのである。


 中には、この学校で有名な女子が告白をしたが振られたということがあったらしい。


 だから、女子の間であの先輩には告白をせず、花をめでるような感覚で遠くから眺めるだけにしようという暗黙の了解がある。


 だが……。


「それでね...........」


 と頬を赤くして、俯く。


「わ、私先輩に告白しようと思うの」

「へーそうなんだ」


 確かに、暗黙の了解といっても誰も告白しないわけではないのだ。


 自分に自信があったり、どうしようもなく好きになってしまった人は告白している。この子は多分どちらともであろう。


 クラスでは割と中心的な立場だし、顔もいいほうである。


「まぁ、どうせオッケーしてくれるとは思っていないんだけれどね」

「そんなことないよぉー。由美ならいけるよ」


 こんなこと言ってはいるが本心は多分、心のどこかで坂下先輩がうんとうなずいてくれると思っているんだろう。


 女子とはそういうものなのである。これに関しては男子も同じだろうけれど


「それでさ、志保ちゃんって可愛いし、モテてるじゃん?」

「由美ちゃんだってモテてるじゃん」

「そ、そんなことないよぉ、私なんて全然だし」

「大丈夫だよ、自信もって」

「うん、ありがとう。それでさ、志保って交友関係広いじゃん」

「まあそれなりに?」

「だからさ、坂下先輩の好きな髪形とか好きなものとかってあるのかなって思って」

「うーん」


 確かに私は、いろんな人から相談されるだけあって普通の人よりは交友関係は広いほうである。


 だが、私だってまだ学校に入ってそんなに立っていないしみんなが憧れる坂下先輩にも特段興味はなかったのであんまり知らなかった。


 だがそこはさすが私、好きなものくらいは知っていた。


「先輩って甘いものが好きらしいよ」

「それは、私でも知ってるよ。結構有名じゃない。何かもっと他にない?」


 残念ながら私が持っていた情報は結構知られていることらしい。


「うーん、ごめん。他に知ってることはないかも」

「そっかぁ。ごめんね、ありがとう。付き合ってもらっちゃって」

「ううん、全然いいよ。あ、じゃあさ」


 つい、いつもの軽い気持ちでいったその言葉。


 なぜこんな言葉を言ってしまったのだろう、と当時の私は少々後になって思う言葉。


 でも、これを言ったからこそ新條結人という私にとって最愛の人との出会いなのだから感謝したほうがいいかもしれない長い目で見るとプラスな言葉


「私も手伝おっか?由美の事応援したいし」

「ええ?いいのありがとう」


 


 

 


 

 





 

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