第85話 過去

「やっぱり、私たちってここだよね」

「よく来てたよね、中学生の時」


 育人に協力してもらって、よくここに結人君を呼んで遊んでいた。


 今では育人がいなくても遊べるくらいに仲良くなった。


 あの時は、自分が恋してるということが分からなかったけれど結人君と遊んだり話したりするのが楽しくて、少し恥ずかしくてドキドキして、でも他の女の事話したりするともやもやしたりしていた。


 これは、篠崎志保という女の子が新條結人を好きになる話。


 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これは中学に入学して三か月くらい経った頃だった。


 周りの人間関係が構築され終わったあたりだろう。


 例にもれず私も関係を築き、クラスの中心になっていた。小学校から変わらず委員長にもなった。


 クラスの中心にいるからこそ、この子はどんな子なのかなと一人一人見ていくと目を引く人がいた。

 

 新條結人君だ。

 

 別に悪い意味とかではないんだけれど。


 なんだろう、私たちよりものを達観してみているというか、私たち中学生とは思えないほど大人っぽいのだ。言動とか行動とか物の考え方とか。


 まぁ、こんなこと言ってはいるけれど、ほとんどしゃべったことはない。


 そんなある日のことだ。


 ある女の子から私は相談を受けた。


 どうやらその子には好きな人がいるらしい。


 女の子の恋に関する話題はキリがない。誰と誰が付き合ったとか、誰が誰を好きとか。小学生の時からそうである。小さい時からそういう英才教育を受けるのである。


 それに私は自分で言うのもなんだが、どうやら容姿がいいらしい。


 小学校の時から、それはそれは男子から面倒なほど絡まれ正直うんざりするほどだった。

 

 中学校に入ってからは、いつ、どこで知ったのか付き合うという概念が入ってきていつからか男子に告白されるようになった。


 入学して三日後にはよくわからない男の子から告白された。


 当然私は断ったが。


 少し脱線したので、話を戻すと私はその子に相談された。


 女子の恋バナなんていうのは話半分で聞いてあげるのがよい。こういうことがあったんだよ、私大変だよね、青春してるよねとか、大体話を聞いてもらいたいだけである


 うんうんと頷き話を聞くのが常だ。


 当然私はその時いつも通り、うんうん、と聞いてあげた。


 それが、よくなかった。


 そもそも相談を受けたのがよくなかったのかもしれない。


 

 

 


 




 





 

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