第82話

 文化祭も近くなってきた、今日この頃。


 駅で空を眺めながら待つ事数分。


 今日は、志帆と育人と出かける日でもある。


 姉さんと明音ちゃんには、出掛けるように声もかけてきたが少し寂しそうな声で「お兄ちゃん、今日、いないんだ」「結人と、お話したかった」と言われ、若干、なびきそうになったけれど、志保と育人と久しぶりに遊ぶのも大事なので今日帰ったらたくさん話すとやくそくした。


「だーれだ」

「……気持ち悪いぞ、育人」

「久しぶりだって言うのに、ひどくないか」


 普通は、女の子がやることだと思う。


 振り返ると、からからと笑って相変わらずの育人がいた。


「あれ、まだ、志帆来てなかったんだ」

「うん、まだ来てないっぽ…」

「だ、だーれだ」

「……志保」

「正解」


 また、後ろを向くと、今度は少し恥ずかしそうに顔を背けて下を向いてしまっていた志保がいた。


「三人、集まったし、久しぶりにパーッと遊ぼうぜ」

「そうだね。いこ、志保」

「うん」


 三人、横に並び、歩き出し、最初に向かったのはゲームセンターだ。


「久しぶりに、これやらない?」

「いいよ、やるか」

「負けない」


 まず最初に、よく三人でやっていた某レースゲームを始める。


「結人君、甘いっ」

「そこで、甲羅は卑怯だって。なら僕もお返しだ!」

「効かないよー」


 バナナで防御され、僕の反撃は失敗。志保はまだ防御アイテムを持っている。

ならっ、


「せめて、育人だけでも連れて行く!」

「ちょ、待って」


 後ろから、何気ない顔で通り過ぎようとしている育人に八つ当たりの赤甲羅をぶつけ、結果は、僕が五位、育人が七位、志保が一位と言う結果になった。


「いえーい、買ったし、ビリの育人にはジュースおごってもらお」

「はぁ、しょうがないか」


 育人がジュースを適当に買いに行き、僕と志保の二人だけになる。


「なんか、楽しいな。こういうの」

「分かる。久しぶりだもんね。三人でこうして遊ぶの」

「そうだね」


 そこで、会話が途切れ、ふと志保の方を見るとじっと僕の顔を見ていて目と目が合う。


「…………」

「……」


 僕も、その見つめている瞳に吸い込まれ、見つめ返してしまう。


 改めて改めて見ると、やっぱりきれいだ。


「おーい、買ってきた………」

「……死ね!」


 そして、ジュースを買ってきてくれた育人にチョップをかまし、そのままゲーセンの端っこでこそこそ話始める。


------------------------------------


「今、凄い、良いところだったんだけれど」

「ごめん、空気を読まなかったこの口が悪いんだ」

「この口かぁぁ!!」

 

 ほんっと、こいつは!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なんか、口引っ張られていてるし。


 仲いいっていいよな。




 








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る