第76話 もし

 ぼぉーっと空を眺め、周りを見渡す。


 周囲には、誰かと待ち合わせをしている人や、営業に行くサラリーマンなどちらほら見える、今日この頃の駅。


 この前の交換条件で、明音ちゃんと一緒に出掛ける約束をしたのだが、絶対に二人だけがいいと言うので、お互い別々の時間で家をでて、待ち合わせをする。


 家を出るとき、友達の家に行くと凛さんに嘘を吐くのは少しだけ申し訳ない気持ちがあったけれど、約束を破るわけにはいかないので、しょうがない。


「お兄ちゃん、えっと、その、お待たせ」

 

 後ろを向くと、いつもと違って少し大人っぽいファッションで長い黒髪をハーフアップにした明音ちゃんがいた。


「あ、あんまり、じっと見ないで。少し恥ずかしい」


 そう言って、少し俯きがちに頬を赤く染めて向てくる明音ちゃんがすごく可愛くてドキッとしてしまう。


「すごく似合っていて、綺麗だね。いつもと雰囲気も違っていてすごく似合ってると思うよ」

「あ、ありがと。すごく、嬉しい……」

「それに、前に僕がプレゼントしたネックレスもつけてくれて、ありがとね」

「うん。お兄ちゃんから貰ったものだし、前に来たときは私つけてくるの忘れちゃったから、リベンジできてよかった」


 そんな事も前にあったな。

 

 今思うと、懐かしい。


「じゃあ、行こっか」

「うん」


 二人で、電車に乗ること一時間ぐらい。まず、明音ちゃんが映画を見たいと言っていたので、映画館にきた。


「私、これ見たかったんだ」


 そう言って、一緒に見たのが高校生の恋愛ものだった。


 血がつながった家族だけれど、兄に恋してしまった妹が苦悩したり、一時期挫折したりもしながら最終的には兄と幸せになる話だった。


 …。……なんだか、僕たちは血がつながってないけれど、今の状況と重なってどうしても、上映中、明音ちゃんの事が気になってしょうがなかったが、明音ちゃんは真剣で、前のめりになってみていた。



「面白かったね。私、感動しちゃったもん」

「そうだね」

「あのさ………もし、もしだよ?現実で、妹が、兄に本当に恋しちゃったらどうする?」


 そんな時、僕はどうするんだろう。


 ………………………。真っ先に考えたのが、明音ちゃんと一緒に付き合ったり、結婚した時。


 一緒に、出掛けたり、子供が生まれたりして楽しそうで、多分幸せな家庭が築けそうな気がする。


「もし、明音ちゃんと結婚したら、毎日楽しいと思う」

「え、あ、う、うん!!」

「けれど、僕じゃ、明音ちゃんに僕は釣り合わないんじゃないかなとも思うし、明音ちゃんは好きな人がいるもんね」

「…………お兄ちゃんの鈍感」

 

 ボソッと、明音ちゃん何か言ったけれどよく聞こえなかった。 

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