第75話
「夜更かししないでちゃんと、寝てね。お休み」
「はーい。お休み、お母さん」
「「お休みなさーい」」
なんだか微妙な空気になった褒め合いの後、僕の作った夕食は好評で、みんなおいしく食べてくれて、各自お風呂に入り、テレビをみんなで少し見て、約束通り、みんなでリビングに寝ることになり、母さんが今、ドアを閉めた。
すると……。
「結人、一緒にこのまま寝よ?それか私の布団の中に来てもいいよ?」
そう言って、少し感覚を置いて左隣りで寝ていた凛さんがいつの間にか僕の布団に入ってきてそう言う。
「やっぱり、凛さんはそうすると思った。だから、私も……えいっ」
すると、今度は右隣に志保が潜り込んでくる。
「お姉ちゃんと志保さんばっかりずるい、じゃあ。……ごめんね、お兄ちゃん、でも私だけ仲間外れは嫌なの」
そう言って、僕の上に猫のように乗っかる明音ちゃん。
「え、っと、あのさ、嫌じゃないの?みんな」
「え?何が?私は全然、嫌じゃないよ?」
「私も」
「私も全然嫌じゃない」
そう言って三人は少し窮屈になった布団に身を縮めるようにして、より深く潜り込む。
すると、必然的に僕と接する面積が増える訳で。
「なんか、こうしているとあれだね。修学旅行とか宿泊学習の夜見たい」
「そうだね」
「じゃあさ、恋バナとかしてみない?」
「そうね、面白いかも」
「私も賛成」
名案を思い付いたかのように言う明音ちゃん。すると、その他の二人はほんの一瞬だけ、目が鋭くなったような気がした。
恋バナかぁ。そもそも、志保はともかく凛さん、明音ちゃんに好きな人なんているのだろうか。
凛ちゃんや、明音ちゃんを好きな人はいっぱいいそうだけれど。
「それじゃあさ、まず、お兄ちゃん」
「え!?僕?」
好きな人、好きな人かぁ。
……………。考えてみたけれど、思いつかない。
思いついたのがこの三人だけれど、多分、この三人くらいしか僕と関わった女の子がいなかっただろう。
「思いつかないなら、こういう女の子が好きだな、とか、こういう仕草が好きだなとかは?」
そうだな……っというか。三人とも距離がすごく近い。食い入るように聞いているような気がする。
そんなに、見られたらなんか緊張するんだけれど………。
「えっと…。なんだろう、優しくて、頑張っている人がいいかな。それで、ちゃんと相手の事を尊重してくれる人。そうしたら、幸せな家庭が築けるかなって……」
「そ、そっか。お兄ちゃんは、結婚した後のこと考えてるんだ」
「ふぅーん、そっか」
「そうなんだ…」
そう言って顔を背け、何か考え事をしている。
もしかして、高校生なのに、家庭を気付いた後のこと考えていて重いとか思われているのかも知れないな。
「あーえっと、じゃあさ、凛さんとか好きな人とかいるんですか」
「……いるわよ」
若干顔を逸らしながら答えた凛さん。
空気を換えるためにどうにか話を凛さんに振ったけれど、まさか凛さんに好きな人がいるなんて。
「それって、どんな人なんですか?」
「いつも、完璧だけれど、どこか抜けていて、優しくて、かっこいい人」
そんな人がいるのか。
「凛さんが認めた、そんな人なら、幸せな家庭が築けそうですね」
「っ!!そうね、そして、その人は鈍感な人だと思うわ」
そして、余計に僕にぎゅっと抱き着き、顏が見えなくなってしまう。
「え、えっと、じゃあ、明音ちゃんが好きな人っているの?」
「………いるよ。とっても家族思いで優しい人で、私のことをちゃんと見てくれていて、とってもかっこいい人だよ」
そうなのか、明音ちゃんも好きな人がいて、そんな人がいるのか。
「明音ちゃんがそんなに認めていて、好きな人ならきっとすごい人なんだろうね」
「うん、でもちょっぴり鈍感なひとかな」
そう言って布団の中に潜ってしまう。
凛さんも、明音ちゃんも好意に気付けてもらえていないのか。大変だな。何か僕も手伝えないかな。
「じゃあ、志保はさ、あれから進展はあったの?」
「うーんと、少しは進展したかな」
ちょっとだけでも前進していたのならよかった。それより…。
「その人ってどんな人なの?」
「うーんと、気を配れて、優しくて、かっこいい人だね」
そう言って、なんだかじっと僕の事を見ている、何かを期待している目だ。これは、あれか、手伝って欲しいってことかな。
「僕でできる事なら、協力するからなんでも言ってね」
「うん、わかった、ありがと」
そう言って、若干苦笑される。
「そして、その人はやっぱり鈍感な人だね」
そう志保も言って、僕により密着して顔をうずめてしまう。
みんな、苦労しているんだな。僕も何か手伝えることがあったら手伝おう。
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