第70話 三者会談

 私たちの視線が交差する。

 

 一人は、私、もう一人はお姉ちゃん、最後に篠崎さん。


 場所は駅近くの公園。四人で一緒に帰るなったが、久しぶりに公園に行ってみようかと言う話になり少し遊び、今は、お兄ちゃんは丁度、飲み物を買いに行っているためいない。


 そして、まず沈黙を破ったのは私だ。


「良いなぁ、二人とも。お兄ちゃんと一緒の学校に通えていて。ちょっと、私だけ不利だと思うんだよね」

「まぁ、それは年の差だからどうしようもないわよ、明音?」


 余裕そうにそう微笑むお姉ちゃん。お姉ちゃんとは今でもすごく仲がいいけれど、お兄ちゃんの事となると別だ。


「だから、私はね。お兄ちゃんを独占できる日を定期的に作った方が公平なんじゃないかと思うんだよね」

「それは、横暴だわ」

「そうですね、横暴だね。それを言ってしまったら、私は一番公平じゃないと思うし」

「それは……」


 確かにそうだけれども。でもやっぱり、なんだか納得できない。受験に失敗するのではないかと言う私の心の弱さの表れなのかもしれないが。


「だったら、一番有利なのは凛さんじゃないんですか?」

「そうだね。お姉ちゃんが一番ずるい」

「去年、あなた達は一年一緒に結人と中学校生活を送れたんだからいいじゃない」


  三人ともまた睨み合いになる。


 そこで、いつも機転を利かせているお姉ちゃんがまともや私たちを先導するようにこう言う。


「じゃあ、三人でそれぞれ結人に時間を作ってもらって個人でアタックを仕掛けるのはどうかしら」

「………いいですね」

「そうだね。いいと思う」


 こういう、機転が利いて大人っぽい人がお兄ちゃんは好きなんだろうか。最近、お姉ちゃんはお兄ちゃんにしか見せないような態度や、顔をしているからこの中で要注意なのは私の中では間違いなくお姉ちゃんだ。


 篠崎さんも危険だけれど、お姉ちゃんほどではない。


 前、お姉ちゃんとお兄ちゃんがリビングで一緒にゆっくりしているとき、お姉ちゃんがお兄ちゃんに擦り寄るように甘えていて、二人ともどこか本当のカップルのように見えて私はたまらず割って入ったこともあったし。


 それと、一番いやなのはここにいる誰でもなく、知らない誰かがお兄ちゃんを奪っていくことだ。


 お兄ちゃんは、すること成すことかっこいいし、天然の女の子たらしだからお兄ちゃんにその気がなくても、好きになってしまう女の子はたくさんいるだろう。ほんとにもぅ、お兄ちゃんは。罪深いよ。


「すいません、戻りました。あと、はいこれ」

「え、もう。良いのよ。私たちの分は買ってこなくて」

「そうだよ。もう、お兄ちゃんは優しすぎ」

「そうだね。結人君は気を使いすぎです」

「えぇ……。でもこれは僕がやりたいことだから」

 

 そう笑顔で言うお兄ちゃんに私たちは目を逸らしてしまう。あの笑顔を見るとどうしようもなく胸が高鳴って何か抑えきれないような気がして。


「じゃあ、さっきの話はまたあとで」

「そうだね」

「そうですね」


 私たちは頷きあう。


「え、なんですか。僕も一緒に混ぜてください」

「それは………出来ないかな」

「そうね。出来ないわ。ごめんね。結人」

「ごめん、お兄ちゃん」

「あ、うん。大丈夫だよ。女の子たちだけで遊びたいときだってあるもんね」


 そう力なく笑うお兄ちゃんに罪悪感が湧きでる。うぅ……お兄ちゃんの事なのに本人に言えるわけないよぉ。


「あ、結人。………」

「ちょ、そ、それは」


 お姉ちゃんがこそっと何かを言ってお兄ちゃんの顔が羞恥に染まる。


「絶対行くからね。さっきのお詫び」


 何を言ったんだろう。私と篠崎さんは首を傾げてしまう。


 こういうところで差をつけられたくないと思い、私と篠崎さんはすぐにお兄ちゃんの傍に行き手を握る。


 お姉ちゃんは余裕そうな顔で笑っていた。






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