第65話 高校生。

「お兄ちゃん、かっこいいなぁ」

「かっこいいよ、結人」

「はいはい、お世辞でも嬉しいです」


 朝から、何度も二人にかっこいいと言われて少しだけ馴れてきた。お世辞なのか、お世辞じゃないのかは分からないけれど。


 周りみると、僕と同じ新入生の人たちがたくさんいた。


 明音ちゃんと、凛さんがいるからこちらをちらちらと見る視線が鬱陶しいけれど、見られすぎてそんな事は二人には関係ないのかいつも通りだ。


「あ、結人君」

「あ、篠崎さん、おはようございます」


 後ろを向くと、篠崎さんがいた。そして…


「おはよう、篠崎さん」

「おはようございます、篠崎さん」

「おはよう、明音ちゃん、それに凛さん」


 三人とも笑顔なんだけれど、何故か怖いんだよなぁ。入院中の時とかも、こういう事が何度もあったし、仲が悪いのかもと思って、前に二人に聞いたら…。


『これはね、女同士の戦いなの』

『仲が悪いとかではないんだけれど、負けられない戦いなんだよ』

 

 と、諭すように言われて、何も言えなくなったのを覚えている。


「あ、結人君の制服姿かっこいいね」

「ありがと、篠崎さんも可愛いと思うよ」

「えへへ、そうかなぁ」


 少し恥ずかしそうに話す、篠崎さんはすごく可愛い。


「あ、あの、お兄ちゃん」


 くいくい、と袖を引っ張られる。見ると何か焦った様子で明音ちゃんがこういってくる。


「私も、この学校に絶対、受かってみせるからその…制服姿を…えっと………ほ、ほめ…」

「えっと…?ほめ…?」


 ほめ…、褒め…


「分かった、明音ちゃんの制服姿、楽しみにしているね」

「う、うん!」


 良かった、当たっていたみたいだ。


「あ、結人、早めに入っておこう」

「そ、そうですね」


 そう言って、凛さんは僕の手を引っ張って進む。それに続くように明音ちゃんと凛さんが続き、明音ちゃんが自然に僕の手を取る。


「私は、手持ち無沙汰だなぁ」

「篠崎さんの入る隙は無いから」

「私たちだけで充分」


 そう言ってより一層、密着してきて緊張してしまう。勘違いしてしまいそうになる。


 ほんとに、最近こういうスキンシップが多くて少しだけ困る。


「じゃあ、結人、私、ゆいとの挨拶楽しみにしてるから」

「お兄ちゃん、頑張って」

「結人君、頑張ってね」


 三人に背中を押されて、自然と笑顔になれる。


 そうして、先生に挨拶の事を話して、数十分して式が始まる。


 隣を見ると、篠崎さんがこっちを見ていた。


 クラスが、同じで五十音順だからか必然的に僕の隣にいた。


「新入生、代表挨拶。新入生代表、新條結人君」

「頑張って、新條君」

 

 小声で、応援されて緊張が和らぐ。僕は篠崎さんに笑顔で返す。


「はい」


 元気よく返事をして立つ。


 今日から高校生だ。いろいろあると思うけれど、篠崎さん、凛さんがいれば楽しくなる。そう思った。


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 新作の方もよろしくお願いします



 

 

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