第64話 過去と現在。
「お兄ちゃんどうしたの?眠くなっちゃった?ほら、一緒に寝よ?」
「そうね、だけれど、明音は出て行った方がいいわ。狭いし」
「それはお姉ちゃんが出て行けば解決するじゃん」
昔のことを長々と思い出していたら、心配されてしまった。
でも、ほんとにいろいろあった。僕の誕生日だったり、二人の誕生日だったり。僕があんまり動けなかったし、受験だったから盛大にすることはできなかったけれど。
それと、あの事を話した日から心配だから二人が一緒に寝ると提案しくれてリハビリも終わった今でもその習慣が続いているというか、まだ心配されているのかもしれない。
それと、二人がすごく甘くなった。入院中からかなり甘くなったがそれ以上だ。あれからというもの僕の事を持ち上げすぎと言うかなんというか。それとすごく距離が近い。
………家族だから変だけれど、なんだか僕の事をその…す、好きみたいでなんだか僕だけ勝手に変に妙な興奮と言うか、なんというか。
明音ちゃんも、凛さんが本当の家族のように思っているからこそ、そんな風に見ちゃダメだと思うし、もちろん僕も本当の家族のように思っている。
凛さんたちの過去の事もあるし、おいそれとそう聞いてはいけないような気がする。
「ほんとに大丈夫?お兄ちゃん」
「じゃあ、もう寝よっか」
「はい。…でも、今日はどっちが一緒に寝るんですか?あの、その、別に僕一人でも大丈夫ですけれど」
「ん?お兄ちゃんを一人になんてさせてあげないよ?私が今日は一緒に寝るから」
「私も」
そう言って、二人が僕の両隣に移動して、布団に入ってくる。右側が明音ちゃん、左側が凛さん。
少しだけ、狭いけれど、二人に挟まれて嬉しくないわけが無いので、狭いなんて二の次だ。
「明日から、結人も私と同じ高校生かぁ」
「そうですね」
ベットの距離が近いからか、吐息が耳に当たってなんだかむず痒い。
「私だけ、離れちゃうのはなんだか寂しいな」
「去年私は我慢したんだから今年は明音が我慢しなさい」
「分かってるよぉ」
見えないけれど、頬を膨らませている明音ちゃんの顔が容易に想像できた。僕も二人と離れるのは嫌だから気持ちは分かる。
「新入生代表挨拶も結人がするみたいだし、ホントに結人はすごいなぁ。流石私の弟だよ。明日は、入学式で学校はないから私、絶対に行くからね」
「私も学校ないから、絶対に行くから」
僕の事なのに、そんなに喜んでもらえるのは嬉しいけれど、恥ずかしいなぁ。絶対、かあさんと父さんも来るし、意気揚々とカメラを回しているのが想像つく。と言うか、卒業式の時それを経験した。
凛さんはボロ泣きしているし、明音ちゃんは嗚咽を漏らしながら泣いていたし。ほんとに嬉しいし、恥ずかしいし、少し申し訳ないし、何よりありがたい。
「それと、篠崎さんも私たちと同じ学校なんだよね」
「そうだね、篠崎さんも受かってたよ」
「私も、すぐに追いつくからね、お兄ちゃん!」
「うん、楽しみにしてる」
それから、少しだけ他愛のない話をして、流石に寝なきゃいけない時間になり、僕も目を瞑る。
少しだけ、高校生活に不安を抱きながら、それ以上に大きな期待を寄せて、眠りについた。
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こんにちはkanikuiです。
ここから、高校生と言うか、新章です。
それと、関係はないですけれど、新作「妹がなかなか兄離れをしてくれない」を書きましたので、興味がある人は見てください。と言うか、興味ない人も見てくれたら嬉しいです。
それでは新作共々よろしくお願いします。
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