第59話 どうしたんだろう。
「あーっと、ここの式間違ってるよ」
「あ、すいません」
「焦らないでね」
あれから、数日たち今は凛さんに勉強を見てもらっている。
受験生だから、怪我したから、と言っていい訳をしても入試が待ってくれるはずもないので勉強をしている。
凛さんは教えるのが下手だとは聞いていたけれど…実際、下手だった。だから、どこが間違っているのか途中式をみて貰って、そこを直したり、式を教えてもらう形で僕の事を手助けしてくれている。
それと…
「あの…凛さん?ちょっと近いです。集中できません」
「そう?ごめんね。最近目が悪くなって」
「……ほんとですか?」
「……ほんとだもん」
最近、凛さんのキャラが崩壊しつつある。
僕ノート事件があった日から、徐々に崩壊していき、今では勉強中も僕に体がくっ付くんじゃないかってくらい近い。
それに、口調もなんだか頼れるお姉さんより、なんだか僕に対してだけ甘えるような感じだ。
でも、ちゃんと、僕が動けないから身の回りの事はやってくれたり、僕が自分でやろうとする前に先読みして事前にしてくれて頼りになるのは変わりないんだけれど。
「お兄ちゃん。喉乾いてない?買ってこよっか?」
「ありがと、明音ちゃん。でも、今はいいかな」
「ん……そっか」
少し、しゅんとする明音ちゃん。
明音ちゃんも明音ちゃんで、僕に何かしたい欲がすごいから、凛さんと喧嘩?というか痴話喧嘩がそこそこ多い。
「結人、そのページ終わったら一緒にテレビ見よっか。結構、長い事勉強してるし」
「そうですね」
「あ、私も一緒に見る」
やる気もでて、さあ、取り掛かろうとした時、ふと、病室のドアが開いた。
「結人君っ!!」
「わ、っちょ、どうしたんですか。篠崎さん」
「結人君が大けがしたって聞いたから、お見舞いに来たに決まっているでしょ」
篠崎さんは僕を見て、すぐに駆け寄って手を握ってきて、かなりびっくりした。
「もう、こんなことしないでね。私…次こんな事したら、許さないんだから」
「う、うん。分かった」
美人にそう言われると、首をこくんと縦に振るしかなくなってしまう。
「はぁ……でも、良かった。元気そうで。ちゃんと勉強は…しているね。何か欲しいものあったりする?買うよ?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとね」
「何でも、言ってね」
食い気味に言ってくるので素直にうんと頷いてしまう。
あれ?委員長ってここまで過保護と言うか、なんていうんだろう。僕とこんなに親密だったっけ?
それと…
「久しぶりですね。篠崎さん」
「篠崎さん、久しぶり」
二人が、なんだろう少し怒ってる?と言うか、なんだろう機嫌が悪い?なんかそれも違うんだよな。しっくりくる言葉が見当たらない。
「久しぶりだね。明音ちゃん、それと凛さん」
そして、なんだか篠崎さんまでそんな雰囲気で、僕はあたふたしてしまう。
どうしたんだろう。
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