第51話 鳴った。
「明音、これって、どうかな?」
「えー、お兄ちゃんにはこっちの方がいいよ」
「うーん」
男性物の服ってどう選んだらいいの分からない。
隣で明音も首を捻る。
何せ男の人に贈り物をするなんて初めてだから、贈り物と言えば服とかかなって思って、選んでいるけれどなかなか決まらない。
「これは?」
「だったら、こっちの方がいいんじゃない?」
「うーん、そうかなー?」
結人はあんまりオシャレをしないように見える。男の子ってそういう物なのかもしれないし、そんな事している暇とかなかったのかもしれないけれど。
でも、とてもかっこよく見えて…って言うのは多分私のフィルムを通して見た結人だからかもしれないけれど。
そんな結人は、おしゃれと言うよりは機能的な服を着ているように見える。通気性が良くて、涼しいものだったり、シンプルで無難なものだったりと。
結人のために買うんだから、結人の目線で選ばなきゃいけないよなって思う自分もいるし、欲を言ってしまうと私が結人に合う服を買ってそして、それを着た結人を見てみたいって思ってしまうのは、許して欲しい。
私が一杯悩んで買ったものだから、きっと喜んでくれるって言うのはうぬぼれだろうか。
いや、でもきっと、喜んでくれる。でも……とそんな恋心?と葛藤もあったりしながら、明音と一緒に服を選んでいく。
明音も時折難しそうな顔をしたり、渡して喜んでもらったときの顔を想像しているのか、だらしなく顔が緩んでいるのが見えて苦笑してしまう。
でもね、明音。お姉ちゃんは妹の先を常に行くものだよ。
昨日リビングで、読書をしていた結人に
「あ、あのさ、結人。いま、欲しいものとかってある?好きなものとかでもいいんだけれど」
「え?何でですか?」
「えっと、あの、結人の事もっと知れたらなって思って」
「そ、そうですか。えっと、ですね…あの、凛さんと明音ちゃんってペアの物が沢山あるじゃないですか。だから、その…僕も凛さんと明音ちゃんと何か共有出来たらなって思ってるんですけれど.....」
「そ、そっか」
こんな風にさり気なく聞くことができた。まさか、結人が私とペアの物を欲しいって思ってくれてるなんて思ってなかったから、少し恥ずかしさからか、素っ気ない態度をとってしまったことは後で、すごく後悔した。
…それは、一旦おいて置いて、私は結人が欲しいものを知っていて、もう買う物も決まっている。明音や篠崎志保に一歩差をつけたと言っても過言ではない。
ふふっ。絶対、負けないんだから。
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お姉ちゃんの口元がにやけている。
服をあげたときのお兄ちゃんの反応を想像しているのかな?
時刻は午後四時を指しているし、そろそろ、帰らなきゃいけない時間になった。
お姉ちゃんと、あれやこれやとお兄ちゃんの服を選んでそこから、お昼を食べて、適当に雑貨屋などを見て回ったりもした。
まぁ、その時にこっそり…ふふっ。
お姉ちゃん、私の一歩リードかな。
私も、いつの間にか、私からのプレゼントをお兄ちゃんに渡した時を想像して口元が綻ぶ。
お姉ちゃんもにやけて顔が引き締まっていなくて、だらしない顔になっているけれど、私もそうだろうからどうしようもない。
時々会話を挟みながら、駅近くまで来た時、お姉ちゃんのスマホが鳴った。
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