第41話 勘違い
「じゃあ、明音ちゃん帰ろ」
「…うん」
明音ちゃんと一緒にが学校を出る。
周りの鬱陶しい視線にも流石になれてきているんだけれど……明音ちゃんはやっぱり僕と目を合わせて喋ってくれない。
それに、朝、一緒に登校していた時よりひどくなっているような。…やっぱり僕と一緒に母さんの誕生日プレゼント選ぶのは嫌なのかな。
凛さんと明音ちゃんだけで選びたいのかもしれない。…少し寂しいけれど、二人だけの何かがあって僕とは一緒に選びたくはないのかもしれない。そのことを言いずらいのなら…僕から言ってあげればいい
「あのさ、明音ちゃん。週末に一緒に母さんのプレゼント選ぶの僕はやっぱりいない方がいい?」
「…?え?な、なんでそんな事思うの?」
明音ちゃんは意味が分からないという感じで首を傾げている。…あれ?
「えっと、明音ちゃんの様子がおかしかったから、朝僕が一緒にプレゼント選ぼうって言ったのが嫌だったのかなって。凛さんと二人で選びたいのかなって思って」
「ち、違うよ。確かにそれが原因で少しおかしくなっちゃてるけれど、そうじゃないの。何度も言っているけれどね、私たちはお兄ちゃんの事を家族だって思ってるの。だからそんな事は絶対に思わないから」
明音ちゃんが強く僕の言葉を否定して…顔を上げたから、きれいな瞳の中に僕の姿が映る。お互い数秒の間、時間が止まったんじゃないかと思うほどに二人とも固まってしまい、辺りの生徒の声で我に返る。
なんだか分からないけれど、微妙な空気になってしまった。
「あ、あの、凛さんのところに行こっか」
「う、うん」
また下を向いてしまっていてどんな顔をしているか分からないけれど、小さくこくんと頷き、僕の後ろをついてくる。
お互い無言のまま駅に着き、先に着いていた凛さんの元へ行く。
「お帰りなさい凛さん」
「ただいま」
「おかえり、お姉ちゃん」
「うん、ただいま。じゃあ、帰ろっか」
凛さんは僕の隣に来て、僕の手をそっと握って先導する。
なんだか最近凛さんの、スキンシップが増えたような。なんだかそんな気がする。自意識過剰かもしれないけれど。
最初のうちは、びっくりして手を離してしまったことがあって凛さんに悲しい顔をされたりしたけれど、少しずつ慣れて今では動揺して手を離さない程度になった。
「どうしたの?明音?行くよ」
「う、うん」
じっと、明音ちゃんは自分の手を見て…ちらっと僕の手を見た気がした。
三人で歩き、今日学校であったことなどを話ながらいつも通り下校する。
「そう言えば、凛さん。週末、一緒に母さんの誕生日プレゼント見に行きませんか?」
僕は何気なく凛さんにこう提案した。
「え?」
「—えっ」
凛さんが驚いた顔をして、そして、嬉しそうに笑って
「いいよ。一緒に選ぼ?」
そう言われ、言葉を返そうとして.........そっと、袖を控えめに引っ張られる。後ろを向くと、明音ちゃんが下を向いていた顔をそっと上げて何かを抗議している顔でこっちも見ている。
…あ、そうか。今の言い方では、明音ちゃんがとは一緒に行かないみたいな言い方になってしまう。
「明音ちゃんも一緒に、だね?」
「……」
…なんだか少し微妙な顔をして、…ふふっと笑って
「そうだよ、私も一緒にね」
「もう、結人。しっかりしてよね。.........勘違いしちゃうでしょ」
凛さんは乾いた笑いを浮かべてそう言ってくる。最後にぼそぼそっと言った言葉は小さくて聞き取れなかった。
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