第40話 言いたいことと
もう四月も終わりかけて、残り一週間となった今日この頃。
そう......四月が終わってしまうってことは二人と一緒に登校することができなくなってしまうのだ。だから僕の気は少しだけ重い。
でも......ちらっと明音ちゃんの方を見る。
明音ちゃんは少し嬉しそうに、でもなんだか気恥ずかしそうに僕の横を歩いている。この感じだと多分、僕がいなくても大丈夫だと思う。以前のように男の人達に見られて、僕が手を握らなくても手先が震えることがなく凛さんといるときのような堂々とした振る舞いをしていた。
だけれど…
「あの、お兄ちゃん」
「ん?何?」
若干もじもじとして下を向いている。
最近、明音ちゃんは僕と喋るときはいっつもこうなってしまう。でも、僕と話すことは嫌いじゃなさそうに見えて、僕としてはどうしたらいいか分からままである。
髪型とかが変で笑ってしまうから顔を背けているのかなと思ってできるだけきちっとしているんだけれど、それでも明音ちゃんは僕と目を合わせて喋ってくれなくて。
「あ、あのね」
「うん」
「ら、来月、お母さんの誕生日があるよね」
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あぁ.......思っていたことと違っていることを口に出してしまった。
確かに、わたしはお母さんの誕生日の事を話そうと思っていたけれど、今、話そうとしていたことは違くて。
本当は、今月でお兄ちゃんと一緒に登校するって言う決まりがが終わってしまうから、来月も一緒に登校できないかなって言おうと思っていたのに、言おうとした直前、妙な恥ずかしさが私を襲って言う事が出来なかった。
「あ!?そうだ。母さんの誕生日が来月にあるんだった!」
「え?あ、うん」
お兄ちゃんは忘れていたっぽい。まぁ、しょうがないよね。最近まで、お兄ちゃんはいろいろ私たち姉妹と仲良くなろうって頑張っていて、やっと心の距離も近くなってきたから、不安が拭えて多分気が抜けたんだと思う。
「どうしようかな。明音ちゃんは何が良いと思う?」
「えっと......」
私たちは毎年手作りで誕生日会を行っていた。
あのクソ男とまだいるときは「誕生日おめでとう」ぐらいしか言えていなかったっけれど、離婚してから、私たちは毎年手作りで誕生日会を行っていた。
その度に「ありがとう、ありがとうね。明音、凛」って言って泣きながら抱きしめてくれたことが嬉しかった。だから今年もそうしようかなって思っていることを伝えると……。
「……ぐすっ」
「お、お兄ちゃん」
急に泣き出して、私の手を握るお兄ちゃん。
「明音ちゃんたちは、すごくいい子だよぉ......」
「……はいはい」
つい昔の事も織り交ぜて話してしまったせいか、お兄ちゃんは感動して泣いていた。
お兄ちゃんは、ちゃんと頼りになって、か、かっこいい人だけれど、私たちの事になると泣きやすいというか、少し子供っぽくなるというか。
私はそっとハンカチで涙を拭ってあげる。
「よっし。じゃあ、その誕生日会をもっと盛り上げよう。そして気持ちの籠ったプレゼントを母さんにあげよう」
「ふふっ。そうだね」
お兄ちゃんがやる気に満ち満ちていて、なんだか微笑ましいというかいつもは凛々しいのに、可愛く見える。
私も精一杯ありがとうって気持ち伝えなきゃ。
「じゃあ、今週末一緒にプレゼントを見に行こっか」
「うん......え?」
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すいません。少し時系列いじって、三十八話で書いた残り一週間を残り二週間にして、今回の話を一週間にしました。
これからもよろしくお願いします。
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