第38話 分からない事とそうかもしれない事

四月ももうあと二週間となった。


日が傾き、教室の欄間窓から陽の光が差し込む。


「ふぅー」


先生の手伝いで荷物運びとかをして、やっと、日誌を書き終え外を見ると部活で汗を流しているサッカー部や陸上部が見える。


今日は日直なので遅くなるから先に明音ちゃんには帰ってもらった。


「あ、新條君。まだ居たんだ」

「委員長は部活?」

「なんか、今日は先生がいないから部活がなくなっちゃって」

「それで?僕を待っててくれたの?」


僕はそう冗談で言ったつもりだったけれど、


「そ、そうだけど」

「え?ほんとに?」

「うん」


そう照れながら言う委員長。


「だったら、言ってくれればよかったのに。じゃあ、帰ろ?」

「う、うん」


二人の間に微妙な気まずさが残りながらも昇降口を出る。


「で?どうしたの?志保?」

「だ、だから........はぁ........。もういいや。で、その、なんか新條君最近なんか浮かない顔をしてるなって思って」

「あぁ........」


委員長にはばれていたというか、よくただのクラスメイトでしかない僕の事なんか見てるよなぁ。


そう、ここ最近。凛さんと明音ちゃんに避けられている訳じゃないんだけれど顔を背けられたり、あんまり話してくれなくなったなぁと思い、もしかしたら僕が何かやってしまったんじゃないんだろうかと思い最近はそれで悩んでいる。


そのことを伝えると、


「........新條君。それは家族として悩んであげているの?」

「え?…そうだけど?」


急にそんな質問をされ戸惑ってしまう。何を言ってるんだろう。僕は兄として、家族として明音ちゃんたちと仲良くしたいなって思っているんだけれど........。


「そっか。じゃあ、自分でそのことは考えた方がいいよ」

「え?う、うん。分かった」


多分、委員長は何か分かって、そうアドバイスしたってことだと思う。だったら自分で考えてみるか。


「それに……だったら私も......じゃぁ」

「ん?なんか言った?委員長」


ホントに小さく口を動かして言った言葉を聞き取る事が出来ずにもう一度聞き返すけれど、首を振って「何でもないよ」と笑って誤魔化される。


「あのさ、新條君。これから寄り道して行かない?」


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なんだか、寂しい。


いつもは三人で帰っていたからかな。それとも、ここ最近お兄ちゃんといるとドキドキしていたからかな。


お姉ちゃんのほうを見ると、なんだかお姉ちゃんもそんな感じがして。


「やっぱり、結人の事迎えに行った方がいいかな」

「そうだね」


やっぱり、同じことを思っていたのかお姉ちゃんがそんな事を言う。断る理由なんかなくて頷き、中学校の方に向かう。


段々と近づくにつれて、気分が上がっていく。なんだろう早く会いたいなって感じがする。


段々と中学校が見えて、校門が見える。そして......お兄ちゃんと...............前一緒に居た人が見える。


あれ、な、んだろう。


前見たときは、もやもやしたのに...............今はすごく苦しい。


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痛い。


胸に痛みが走る。物理的な痛みではなくて、心の痛み。


こう締め付けられる感じ。じわじわと広がって痣ができるような。


これってやっぱり...............。私、もしかしたら............................。こう思ったことは前もあった。


いや、これは違う。自分は”姉”としてあの子の事をとそう自分に言い聞かせてきたけれど。


私は、結人の”姉”だから。でも、だとしても。......この気持ちを確かめなきゃダメなのかもしれない。そしたら、きっぱり諦めることもできるかもしれない。


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