第37話 二人の不調と、手のぬくもりと

最近、なんだかおかしい。


私は隣にいるお兄ちゃんの顔を見る。


……ほら。段々と鼓動が早くなって顔が見れなくなる。


「どうしたの?明音ちゃん」

「いっ…いや、なんでもないよ」

「なら、良いんだけれど....」


今は、お姉ちゃんを駅に迎えに行って三人で家に帰っているところだ。


気を紛らわそうと反対側の歩道を見ると、小さな子がお母さんの手を取って楽しそうに帰っているのをみた。


私はなぜだかその光景をじっと見つめてしまう。思いだすのは.........あの日の朝の時の事


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最近、どこか私は不調だ。ぼぉーっとしてしまうのだ。


結人がいないと、結人の事をふと考えてしまう。


これは.........多分、結人に対しての”姉”としての愛情が強くなったからだと.........思う。


隣で歩いている結人の顔を見る。どこか安心して、そして、少しドキドキする。ふとした仕草でさえも。


「凛さん、大丈夫ですか?」

「え?だ、大丈夫だよ」

「なら.......いいんですけれど」


結人が私を心配してくれている.......それだけで鼓動が跳ね上がる。


.........。


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最近、二人が変だ。


前までの並び順が右から凛さん、明音ちゃん僕だったはずなのに、最近では凛さん、僕、明音ちゃんの順になっている。


それに........


「どうしたの明音ちゃん?」

「い........いや、なんでもないよ」


「凛さん、大丈夫ですか?」

「え?だ、大丈夫だよ」


明音ちゃんは僕の事をちらっと見てくる事が多くなったし、凛さんはぼぉーっとしていて、なんだか笑顔だし。


それで、二人に聞くと、「大丈夫だよ」とか「何でもないよ」とか。


ここ最近、嫌われているんじゃないかと思い、二人に聞いてみると........


「え?そんな事ないっ!」


って明音ちゃんには強く否定され、


「なんで、そんな事思ったの?私、悪い事しちゃった?」


と凛さんに言われ、嫌われている訳じゃないと思う........。


はぁ........どうしたものかな。


そうおもって明音ちゃんの方を見る。すると、じっと、反対側を見ているので僕もつられて見ると、小さな子がお母さんと一緒に手を繋いで歩いているのが見える。


羨ましそうなそんな顔をしている明音ちゃん。


もしかして........母さんと手を繋ぎたいのかもしれない。そうなのだとしたら気持ちは何となく分かる。


僕も、小さい頃、繋ぐことができる手がなかったから。いつも見ていることしかできなかった。僕には、母さんがいなかったし、父さんは仕事でいなかったから。


多分、明音ちゃんも同じなんじゃないだろうか。多分、気遣ったりして、上手く甘えられなかったのかもしれない。


........なら


「えっ........!」


頼りない僕の手だけれど、明音ちゃんの手をそっと握る。


「あ、あの……お兄ちゃん?」


びっくりした顔でこっちを見る明音ちゃん。


「えっとさ、こんな僕の手ならいつでも貸すから。寂しかったら言って」

「え、あ、え?えっと........ありがと。ど、どうしたの?お兄ちゃん」

「羨ましいのかなって思って」

「……あぁ。もぅ、お兄ちゃん。気を使いすぎだよ」


そう苦笑して、そっと握り返してくれる。


「羨ましいのは、結人もなんじゃないの?」


そう耳元で囁かれ、びくっとする。そして、そっともう一方の手を握られる。凛さんの手は少し冷たくて。……でも暖かくて。


もしかしたら、僕もあの光景を見て寂しかったのかもしれない。


........でも、今は、二人が隣にいる。


大きくなったからか、手を繋いで帰るのは少し気恥ずかしかったけれどそれ以上に嬉しくて、家に帰って母さんに言われるまで頬が緩み切ったままだった。





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