第35話 どうしたんだろう。私。

「おい、裕也。お前どういうことだよ。新條明音さんと一緒に学校来ていたらしいじゃないか」

「なんだよ、育人。朝から騒々しいな」

「いや、いつからお前明音ちゃんと付き合ってたんだよ」

「はぁ.........。付き合ってない。じゃあ、育人に問題な」


いきなり、問題を出されて困惑する育人。


「は?」

「明音ちゃんの苗字は?」

「新條。.........え?」

「そう、僕も新條だ。つまり、僕の親とあっちの親で再婚したんだよ。だから今、明音ちゃんとは兄妹ってこと」

「ま、マジか」


これは、凛さんと明音ちゃんが言ってもいいって言ってくれたことだ。こうなることが分かっていたから相談したら、


「お兄ちゃんとはもう家族だよ。だから全然言っていいよ。今まで私たちのために内緒にしてくれてありがとね」

「本当にありがと。結人」


そう二人に笑顔で言われ、最初のころなら絶対に嫌だか、無視をされていただろうなと思い、今こんなに認められているのが嬉しくて、泣きそうになり凛さんが頭を撫でてくれて、明音ちゃんがちょっと慌ててたのが可愛かった。


今は、それより


「でも、僕の友達とか言って、明音ちゃんたちに近づくのは止めろ。あの子は男子が嫌いだから。無理やり近づいたら.........な?」

「え?あ、お、おう」


教室で聞き耳を立てている馬鹿な男子にも聞こえるように大きな声で、語気を強めて言う。


僕が凄んだところで怖がる人なんて大していないだろうけど。




「じゃあ、今日はこれで終わり。日直号令」


日直の号令で今日も学校が終わる。


ちょっと長引いちゃったな。明音ちゃんが変な輩に絡まれていたら嫌なので僕は急いで教室をでて明音ちゃんのいる校門まで行く。


「ごめん。明音ちゃん。遅れちゃった」


明音ちゃんは首を振って、


「大丈夫だよ。お兄ちゃん過保護すぎだよ」


そう言って苦笑する。


「そうかな。普通だと思うけれど。こんなに可愛い妹がいるんだからさ。心配になるのは当然だと思うよ」

「か、かわ、...可愛い!?ど、どうしたの?お兄ちゃん」


あ、まずい。今日一日、明音ちゃんとの登下校のせいで、浮かれていて思っていたことを口が滑って無意識に言ってしまう。


見ると、明音ちゃんは照れて頬を染め、俯いてしまう。


「あ、えっと.........」


なんか気まずくなり、どうにか言葉を出そうと思うけれど何も出てこなくて。


「........お兄ちゃんもかっこいいと思うよ。私は」

「.........え?」

「は、早く駅に行こ?」


明音ちゃんのそのボソッと言った言葉が、僕の耳にしっかり届き呆然としてしまう。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

「は、早く駅に行こ?」


私はそう言って先に歩き出す。


わ、私何言ってるんだろう。お兄ちゃんに可愛いって言われて動揺して慌てて、か、かっこいいとか言っちゃった。


お姉ちゃんに可愛いって言われた時とは何かが決定的に違って、私の胸がドクンっと跳ねる。


き、聞こえちゃったかな。私がかっこいいって言ったこと。


「あ、ありがと。明音ちゃん。お世辞でもうれしいよ」

「お、お世辞じゃないよ」


........あぁ、またやってしまった。何故かそのお世辞と言う言葉を否定したくなって無意識に言ってしまう。


「あ、ありがと。明音ちゃん。じゃあ、その......行こっか」

「う、ん」


お兄ちゃんの照れた顔を見て.........私は、何故か嬉しくなる。


今日.........本当にどうしたんだろう。私。早く帰って寝よう。




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