第33話 互いの心配と、出した答え。

「えっとね、私、明日から高校生になるじゃない」

「そうですね」

「そうなると私と明音は必然的に別々の時間に登校しなきゃいけないから。それが心配で」

「あ.........」


それはそうだ。凛さんの行く高校は、電車で一駅分だから、徒歩でもギリギリ行けるとは言え、中学校よりもはるかに遠いもんな。


思ってみれば、明音ちゃんも何となくぼぉーっとしていることが数回あった。多分、いろいろ考える事があったんだと思う。


「それで、その……結人に一緒に行ってあげて欲しいなって」

「.........え?で、でもいいんですか」

「大丈夫だよ。私も、明音も結人の事を嫌がったりしない。今は.........大事な家族なんだから」

「っ......そうですか」


一瞬、凛さんに大事な家族と言われて泣きそうになった。じんわりと心が温かくなる。


「が、頑張ります」

「ふふっ。そんなに、緊張しなくてもいいのに」


重大な役を任された。しっかりしないと。


「それはそれで......」


と、凛さんは後ろから買ったばっかりの文庫本を取り出す。


「はい。なんですか?」


それから、新しく買った本の話を少しだけして凛さんの部屋を出た。ここ最近、凛さんと結構話すようになって、本の話をよくする。僕も本が好きだから飽きないし、それと、凛さんの普段の堂々とした立ち振る舞いが崩れて年相応の女の子のように生き生きしながら本の話をしているのを聞くとこっちまで楽しくなってしまう。


少しだけ、楽しさの余韻に浸り歩いて、リビングのドアを開けると、明音ちゃんがいた。


一応、僕が一緒に行ってもいいか確認取っておいた方がいいよな。凛さんが伝えておくとは言っておくとは言っていたけれど。


ふぅ…っと深呼吸をする。まだ....どこか拒絶されるんじゃないかと心の中で思っているのかもしれない。


そんな事はないと分かっていても、不安なものは不安で。


少し躊躇していると、明音ちゃんがこちらに気付き…


「あ、お兄ちゃん。あの、話があるの」

「ん?何?」


明音ちゃんがかなり真剣な顔をしている。多分大事な話だ。


僕は気持ちを切り替えどんなことが来てもいいように。どんっと気持ちを構える。


「えっと、ね。その、お姉ちゃんは明日から高校生になって、私たちは別々に登校しなきゃいけなくなっちゃって」


.........あれ?


「だから、その.........お兄ちゃんが、お姉ちゃんと一緒に行ってくれないかなって思って。駅までで良いから。……私、心配で」

「.........ははっ」

「お、お兄ちゃん?ど、どうして笑うの?」


明音ちゃんが不安そうな、戸惑った顔をする。


「ご、ごめんね」


凛さんと、明音ちゃん、思っていることは同じで。自分の事はそっちのけでお互いがお互いを心配しあっている。


僕は、明音ちゃんに凛さんから言われたことを話した。


「え?お姉ちゃんも」

「やっぱり、二人は似てるね。それと、明音ちゃんと凛さんも自分の事をもっと大事にした方がいいよ」

「むぅ。お兄ちゃんよりは自分を大事にしてるし。......そっか、お姉ちゃんもか」


そう言って、なんだか嬉しそうに笑う。


「ふふっ。明音も、同じこと思っていたのね」


リビングの扉から、いつからか分からないけれど話を聞いていた凛さんが入ってくる。


「明音、もっと自分を大事にしなさい」

「それはお姉ちゃんもだよ」

「二人ともだよ」

「お兄ちゃんが一番、人の事言えないと思う」


さんにんとも苦笑してしまう。


それから、話し合いをして、高校まで行きますよと僕が言ったら、ただでさえ私たちからお願いしているのに負担が大きすぎると二人に却下され、やっぱり一番大事にするべきと言われ、二人から僕が普段している家事を二人がやりたいと言い出して今度はそれを僕が却下したり。


最終的に出した結果は…



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