第31話 つまらない休日から……
あぁ、暇っていいことだと思っていたけれど、そうでもないんだな。
小さいころ、暇があったらこれしたいこれやりたい、なんて思ってたけど実際暇になってみれば、明音ちゃんたちには、少しだけ悪いけれども、なんだかやる気が起きない。
もしかしたら、母さん、明音ちゃんや凛さんがいるから、家事をすることがやりたいことになっていたのかもしれない。
暇だからか、僕ノートを取り出して過去の事を思い出す。そう言えば旅行の帰りの時.........明音ちゃんに「なんで兄さんは、そんなに私たちに優しいの?」と聞かれたことがあったなぁ。
そんなの、家族だからだと思うけれど、その問いを分からないけれど時々思い出す。もしかしたら、僕の中で何かちょっとした引っ掛かりがあるのかもしれない。そんな事を思っていると.........。
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あぁ、なんだかすごく緊張する。ただ、呼ぶだけなのに。お姉ちゃんを呼ぶときはこんなに緊張しないんだけどな。
ホントにこんな事で喜んでくれるのかな?
なんだかんだでもう、ドアの前で三分くらい経ってるよ。私。いい加減やらないと。
兄さんの事を知るんでしょ。だったら行動しないと。
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不意に、ドアをノックする音が聞こえる。開けると、
「あ、の.........」
明音ちゃんがおいしそうなクッキーを持ってきてくれていた。僕に作ってくれたのかな?
「あのね.........」
「うん」
「あの.........”お兄ちゃん”。クッキー作ったんだけど食べてくれないかな?」
「え、あ、え?」
今、なんて言ったの?
「お、お兄ちゃん。聞いてる?」
「え、あ、う、うん」
言った、今、明音ちゃんがお兄ちゃんって言った!!
密かに思っていた。凛さんはお姉ちゃんなのに、僕の事はお兄ちゃんって呼んでくれない事をちょっと、ほんのちょっとだけ悲しいと思っていた。けれど、いま、お兄ちゃんって言ってくれた!!
お兄ちゃんって、兄さんより心の距離が近いような気がする。主観だけど。
だから、すごくうれしい。
「あの、えっと、ありがとう!!明音ちゃん。すごくうれしい」
「.........ふふっ。そっか」
明音ちゃんは、なんだか誇らしいような、それでいて嬉しそうな顔をしながら、リビングの方に行ってしまった。
もっと、呼んで欲しかったなぁと思っていたら、入れ替わるように凛さんが来る。
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大丈夫、明音にできて、お姉ちゃんである私ができなくてどうするんだ。と鼓舞するも、大丈夫かな。ぎこちなくないかな。
疑問は尽きなくて。ふと、こんな言葉が頭をふらつく。
告白。ドラマとかで主人公が緊張しながら女の子に告白するシーン。その言葉に一瞬だけドキッとした。意味が分からないけれど。
状況は違うけれども、同じくらいの緊張なのかもしれないとかおかしなことを考えながら彼の前に立つ。
ただ、言うだけ。私は彼を信用しているし、今では大切な人だ。ならこのくらいの事言えて当然だ。今まで言えていなかったのがおかしいだけ。
よしっ。
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なんだか、凛さんらしくなく、そわそわしているような気がする。
「あの......」
「はい」
「あのね.........結人。一緒にお話ししよ?本の事とか」
「え、あ、え?。.........もう一度、言ってくれませんか」
「結人。一緒にお話ししよ?」
.........あぁ、もう今日僕は死ぬんじゃないかな。
凛さんに、お話のお誘いをもらえたどころか、結人って呼んでもらえた。
これも、密に思っていたことだけれど、明音ちゃんの事を明音って呼んでいるのに、僕の事はまだ君付けなんだなと、ほんの、ほんっとに少しだけ悲しいと思っていたけれど、明音ちゃんに続いて凛さんも呼んでくれた!!
勿論返答は
「はい、喜んで!」
それから、凛さんと一緒に本の話で盛り上がって、意外と凛さんは乙女チックだったとか、途中から明音ちゃんもきて、クッキーをおいしいと言って褒めたら凛さんも作ってくれていて、頬を赤くして顔を背けていたのが可愛かったりと、つまらない休日が結果的に最高の休日となった。
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