第24話 一歩踏み出して

「えっと、ここはねこれが主語になって」

「うん」

「それで.........」


もうお正月気分もすっかり消えて、冬休みも終わろうとしていた。そんなある日。リビングの掃除を母さんとしていた時だ。


「あの........兄さん」

「え?な、なに?明音ちゃん」


なんだろう、明音ちゃんから僕の方に来るなんてそんなにないのに。


「あの........冬休みの宿題で分からないところがあって教えてくれないかなって」

「う、うん。勿論だよ」

「ありがと」

「いつからやる?」

「じゃあ、午後からで」

「分かったよ」


まぁ、そんな事があって今に至る。


「この訳でいいの?」

「うん。できているよ。じゃあ、次行ってみよっか」

「うん」


真剣そうに解く明音ちゃん。


思えば、ここ最近、凛さんも明音ちゃんも僕に話しかけてくれるようになったような気がする。


どうしてだろう?........少しくらい僕の事を認めてくれたってことなのかな。


そうだったらいいな。


「兄さん、これでいい?」

「うん。当たってるよ。あと、三問だから頑張ってね」

「うん」



そして、待つこと数十分。明音ちゃんがすべて解き終えて、今日のお勉強会はお開きとなり、母さんも仕事が終わったのか一緒に混ざっておしゃべりをする。


僕は邪魔だなと思い、席を立とうとすると........


「........あの、兄さんもここにいて」


袖をそっと、弱々しく引っ張って、そんな事を言ってくる明音ちゃん。その手は少しだけ震えていて。


「ありがと、明音ちゃん。じゃあ、まだ僕もここにいようかな」

「......うん」


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うぅぅぅ。ちょっとやりすぎたかな。こういう事やるのは。


兄さんの事をもっと知ろうと思って、もっと喋ってみようと思って止めたけど。こういう事をいうとなると…まだ、ちょっと男の人だって思うと声が少し上擦ってしまうし、手も震える。


お姉ちゃんに一緒に話そうって言うのは訳が違うね。まだ少し緊張してしまう。


でも、しっかり一歩は踏み出せた。兄さんがこっちに踏み出してくれたように。


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話すこと一時間くらい。明音ちゃんの事や、凛さんの事をたくさん知れた。例えば、明音ちゃんは裁縫ができたり、凛さんは、僕と同じで本が好きだったり。


「そう言えば、結人君の誕生日っていつなの?」

「えっと…うーんと…、すいません忘れちゃいました。明音ちゃんと母さんと凛さんの誕生日っていつなんですか?」

「えっと、私は二月十四日」


明音ちゃんは、二月十四日。メモメモ。


「私は、五月一日で、凛も明音と同じで二月十四日なの」

「へぇー。なんかすごいですね」

「そうなの。それで、結人君の…」

「あ、もうこんな時間ですね。夕飯作らなきゃ」


僕は、席を立ちキッチンの方へ行く。


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結人君が作ってくれた夕食を食べ終え、敬人さんが帰ってくる。


結人君はお風呂に入っていて、リビングには凛と明音と私がいる。


…敬人さんに聞きたいことがあるんだよね。


「敬人さん」

「なんですか?冴香さん」

「結人君の誕生日っていつなんですか?」

「それは……いつだっけな?」

「真面目に答えてください」

「……俺が言ったって言わないでくださいよ。口止めされていますから」

「はい」


やっぱり何かあるんですね。


「昨日です。結人の誕生日」








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