第23話 知らない事願い事
「うぅ、寒い」
「だから、マフラー持って来た方がいいって言ったのに」
「こんなに待つなんて思わなかったんだよ」
僕の前で凛さんが明音ちゃんにコートをかけてあげている。
一月三日。僕たちは神社に来ていた。一月一日やら二日は混むだろうから避けたんだけどまだちょっとだけ混んでいた。
今年は、凛さんの受験だから来たわけだ。凛さんは模試の判定もかなり良くて、ほぼ確実に受かるから行く必要ないって凛さんは言っていたんだけど、母さんが念のためと言って結局行くことになった。
多分、凛さんたちや、明音ちゃんたちと、それと父さんとどこか出かけるのが楽しいんだと思う。
それは、凛さんたちも同じみたいで、来たら楽しそうな顔をしている。
勿論、僕も同じだ。
「あれ?新條君?」
「ん?あぁ、篠崎さん」
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
と言って二人してペコリとお辞儀をして、笑ってしまう。
「なんか、妙に畏まっているのが、ふふっ」
「ははっ。そうだね。それにしても偶然だね」
「そうだねー。私は毎年家族でここに来るから」
「結人君。先行っちゃうよー」
そう母さんに言われる。
「分かりました。すぐ行きます。.........それじゃあ志帆、僕行くね」
「だ、だから急に名前呼ぶな!なんかびっくりするから」
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新條君に母親っていたっけ?中学一年の時話してくれた時にはいないって言っていたような。
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「ごめん。学校の人と会ってて」
「大丈夫だよ」
私は、ぼぉーっとしてしまっていた。兄さんが私たちには言わないような冗談?を言ったり、私たちには向けないような笑顔をしていたから。
私たちに向ける笑みは優しく、包まれるような笑みで。今のはなんだか気軽な感じと言うかそう言う感じ。
私は、兄さんの事をあんまり知らない。いや、知ろうとしなかった。けど、今は.........家族だって、思ってる。私たち姉妹を信じさせてくれるそんな今までの男の人とは違う人。
兄さんは一生懸命私たちと仲良くしてくれているのも知っている。だから、私も少しは歩み寄らないと.........だよね。兄さんに失礼だし。
私の中で、一つやることが決まり、お姉ちゃんの受験の事と一緒に賽銭をした。
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彼、あんな顔をするんだ。
私は、そんな風に思った。私たちには見せない顔だ。
結人君は、私たちにすごく優しい。けれど、その分だけ自分の事が疎かになっていると思う。ここ少ない期間結人君と接してみて分かった事だ。
彼は私たちの事を、家族の事を第一に考えている。
結人君は、私たちと同じくらいのつらい経験をしていても、私たちのように突き放したりせずに仲良くしようとしてくれた。
今度は、私の番じゃないか。結人君が私を信じさせ続けてくれるなら私だって何か返さなければいけない。.........一応あの子の姉と言う訳なのだから。自分でも頑張るけれど.........
私は、受験の事と一緒にもう一つお願いごとをした。
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うーん、何をお願いしよう。
隣の凛さんと明音ちゃんは何かお願い事をしているみたいだけど。
じゃあ、僕は.........
『凛さんと、明音ちゃんが事故や危険な事に会いませんように』
『兄さんの事をもっと知れますように』
『結人君の事をもっと知れますように』
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