第22話 知る事とぬくもりと
「ん、んぅ......」
足元がやけに寒くて、目が覚める。時計を見ると、朝六時を指していた。
旅行してから結構経ち、もう年末。大掃除もほとんど終えて、今日は12月31日。
眠い目を擦りながらも頑張って起きてキッチンに行く。
見ると、先客がいた。
「おはよう、結人君」
「おはよう。凛さん」
旅行から帰きて、翌日。僕が朝ごはんを作っていると、凛さんが来て、僕に料理を教えてくれって頼んできた。
『あの...........私に料理を教えてくれないかな?私も少しはできるようになってお母さんを楽させてあげたいし、あなたを少しでも知って、もっと信じられるように』
まぁ、そんな訳で凛さんと僕で最近は料理をしている。
「あ、また失敗しちゃった」
「大丈夫です。それは僕が食べますから」
「ダメ、私が食べるから、結人君はちゃんときれいなものを食べてください」
一日一回、自分の分の目玉焼きを作っている凛さん。成功確率が二分の一くらいまで上達している。
「また明日...........は元日だから、おせちか。お正月が終わるまで、練習はできないですね」
「そうだよね」
「...........あの、その代わりといってはなんですけど今日の年越しそば一緒に作りませんか?」
「う、うん」
凛さんが若干戸惑いながらもこくんと頷く。
「おはよ、凛。結人君」
「おはよう」
「おはよう、母さん」
ニコニコしながら、挨拶をしてくる母さん。多分見てたんだろうな。少しだけジト目を母さんに送っていると、ニコッと笑ってごまかしてくる。
母さんも今になって思えばいつからかお茶目と言うか素の部分を見せてくれるようになったいた。
「朝ごはん、ありがとね、凛」
「うん…」
頭を撫でられ、恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに笑っていた。そしてぼくが見ていることに気づき、頬が赤くなってリビングから逃げるように出てしまった。
「もちろん、結人君もありがとう」
「朝ごはんを作るくらいなんてことないですよ」
「それもそうだけど、そうじゃなくて、凛とちゃんと向き合ってくれてありがとう。結人君のおかげで最近あの子少し肩の荷が下りたというか、素直になってくれるようになったから」
「…そうですか。僕は何もやってないですよ。凛さんにしつこくしただけです」
「…ふふっ。そっか。じゃあ誰かさんのおかげで久しぶりに凛の頭を撫でられてよかったよ」
そう言って僕の事をぎゅっと抱きしめる母さん。
「でもね、明音や凛だけを気にするんじゃなくて、自分の事もちゃんと気にしてね。私がお願いしておいてなんだけれど。だから、少しでも悩みとかつらいことがあれば私が聞くから言ってね」
「..........はい。分かりました」
..........なんだか、腕の中はすごく安心して、母親のぬくもりってこんな感じなのかなとか思いつつ、みんなが来るまで、頭を撫でられ続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます