第17話 提案

冬休みの初日、朝目が覚めて、寒くてベットから出たくない気持ちを殺しつつ起き上がり、顔を洗う。


冬の冷たい水が寝起きだった僕の頭を覚ます。


リビングの方から何も音が聞こえないから誰も起きてなんだと思う。昨日の夜遅く父さんが帰ってきて、そのままリビングのソファで寝ているかもしれないけれど。


そっと、ドアを開けると案の定なにもかけずに寝ている父さんを見つけ、やれやれと思いながら、そっと毛布を掛ける。


「ありがと、父さん」


なぜか恥ずかしくなり、キッチンに行き料理を手早く進める。


途中から母さんが加わり、一人でやるより断然早く作り終えた。


「父さんあんなとこで眠って、明音ちゃんとか凛さんの邪魔にならなきゃいいけど」

「そう言って、起こさない結人君はツンデレさんかな?疲れていると思って起こさないんでしょ?それに毛布も結人君がかけたんでしょ?」

「...........見てたんですか?」

「うん」

「声かけてくれればいいのに」

「なんかね、昔の事思い出して。凛がああやって結人君みたいに毛布かけてくれたなって思ってなんだか、胸がじんっとしてね」

「...........そうですか」

「だから、この気持ちを.......えいっ」

「っと。抱き着かないでくださいよ」

「よしよし、良い子だね」

「.......少し恥ずかしいんでやめてください」

「止めないよ。母親の特権みたいなものだからね」


十分ほどギュッとされながら頭を撫でられる。


「もう、流石にやめましょう。頭が禿げちゃいます」

「なんか懐かしくて。明音は今でもさせてくれるんだけど、凛はやらせてくれなくなっちゃったから。そう言って照れ隠しするところも可愛いなぁ」


少し寂しそうな顔をして、また笑顔になったけど流石に頭は撫でなかった。


「ふぁぁ。おはよう。お母さん」


眠そうな顔をして、あくびを手で隠しリビングに入ってくるあかねちゃん。


「おはよう、母さん」

「...........それと兄さんもおはよう」

「おはよう。明音ちゃん」


少しだけ、顔を曇らせたような気がしたけど、僕に挨拶をしてくれた。


時計を見ると、七時になっていたため、ソファで寝ている父さんを起こす。


「ふぁ。...........おはよう。結人」

「ん。おはよう。もう朝だよ」

「...........毛布かけてくれたのか?」

「風邪ひかれたら、僕が困るからね」

「...........そっか」


そう言って、ガシガシと頭を撫でて、「シャワー浴びて、着替えてくる」と言ってリビングを出る。


「……雑に撫でんなよ」


久しぶりに雑に撫でられ、なつかしさから、それとも気恥ずかしさからか、何故か苦笑してしまう。


「仲いいね」

「そうかな?」


明音ちゃんがそう言ってくる。その言葉はなんだか寂しいような嬉しいようなそんな感じだ。


それから、三十分くらいして凛さんと、父さんもリビングに集まり、久しぶりに全員で食事をとる。凛さんと、明音さんの動きは僕から見るとかなり固い。


父さんはそんな中、こんなことを言った。


「みんな。少し休みが取れたから、家族旅行に行かないか」

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