第16話 不安と、信用と、気持ちと
凛side
私は、まだ...........彼の事が分からない。分かってはいけない。
今までに会った男の子たちとは違った彼。
でも、私は彼を信用しちゃいけない。私は明音を、母さんを守らなきゃ。小さい頃、何もできなかった私とは違うから。
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「結人ー。明日から、冬休みだな。どこか遊びに行こうぜ」
「いいけど、あんまりはいけないぞ」
「よっしゃ。どこ行こっかな」
そっか、明日から冬休みか。ここ最近の生活が充実していたせいか、すっかり忘れていた。
まぁ、まだ完全に打ち解けたわけじゃないし、何なら、凛さんとは相変わらず発展がないし。
「それより、お前成績は大丈夫なのか」
「...........大丈夫、大丈夫」
「ならいいけどさ」
明後日の方向を向いてそう言う育人。まぁ...........その、お疲れ様。
それより、明音ちゃんの成績はどうなってるんだろう。
「ただいまー」
「おかえり」
「おかえり」
「おかえり」
ただいま、おかえり、良いなぁ。
これを作った人に感謝したいくらい。そう感慨深げに思っていると
「どうしたの?にいさん」
「何でも、ないよ」
明音ちゃんが不思議そうにこっちを眺めてくる。こうして明音ちゃんと話せるのもなんだかいいよなぁ。まぁ、まだ、薄い膜みたいなものが張っているし、まだ、凛さんや母さんに向ける自然な笑みと、僕に向ける笑みはなんだか少しだけ緊張が含まれていて違う。
...........焦らなくてもいっか。段々と仲良くなっていけばいいんだから。
「あ、そう言えば、結人君、成績どうだったの?」
「へ?あ、普通でしたよ」
思いに浸っていたため素っ頓狂な声が出てしまう。
「結人君の普通は信用できないなぁー」
「そんな事ないです。普通ですよ」
カバンから通知表を出し、見せる。
「ほら、やっぱり全部Aじゃない」
「え?いや、違いますよ。ほら、美術がBじゃないですか」
「もおーそう言う事じゃないんだけどな。それで、明音と凛はどうだったの?」
「私はいつも通りだったよ」
「私は少しだけ、上がった」
そう言って、二人も母さんに通知表を出す。明音ちゃんの方を見ると、ちょっとだけ誇らしいようなそんな感じ。
「凛はいつも通りすごいけれど、明音も頑張ったじゃない」
「......うん。えへへ」
母さんに頭を撫でられ、そうはにかんで笑う明音ちゃんは年相応の顔で、見ていて微笑ましい。
凛さんの方にスライドさせると、少しだけ羨ましそうなそんな感じ。
「じゃあ、今日の夜ご飯はリクエスト制にしちゃおっかな」
「じゃあ、ハンバーグ!」
「分かったよ。じゃあ、作っちゃおうかなー。他にはないかな?」
「えっと……じゃあ、私には少しだけサラダ多めで」
「はいはい。他にはないかな?」
「じゃあ、僕は…作る側にまわります」
「ふふっ。そう言うと思ったけど、ダメです。じゃあ、結人君は......一週間家事をしちゃだめってことで」
「え!?ちょ、ちょっと待ってください」
「じゃあ、今日、おとなしくリクエストしてくれたら無しにしてあげる」
「……カレーで」
「ふふっ。分かったよ」
そう言って鼻歌交じりにリビングに行く母さん。
...........敵わないな。僕が遠慮してリクエストしないことが分かってたから、あんなこと言ったんだろうな。
でも、残念だったね。母さん。最近聞いたけど、カレーは明音ちゃんが好きな食べ物だよ。ここにきて僕ノートの存在が役に立って良かった。
なんだか、意味も分からないけど、誇らしく思いながら自分の部屋に戻ろうとリビングを出る。
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「明音」
「ん?何?お姉ちゃん」
「...........あのさ、あの人の事どう思う?」
「…悪い人では、ないなって。他の人とは違うなって思ったし、優しい」
「...........そっか。でも、気を付けてね。気を付けないと…」
「.................うん。分かってる」
複雑そうに顔を歪めた明音。過去の事を思いだしているのかもしれない。
だから私は、あなたをまだ信じてはいけない。
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