第15話  明音ちゃんへのご褒美と

期末テストが終わり、数日後テストが返ってきた。


「結人ー。今回も助かったぁ」

「はいはい、離れろ」


今は育人には悪いが、明音ちゃんのことが気になってしょうがない。


ちなみに僕は、全教科九十点前後ぐらいだった。


大丈夫かな、明音ちゃん。




「ただいま」

「おかえりー。結人君」

「おかえり、お兄ちゃん」

「おかえり」


くぅ.........ただいまの言葉が心にしみる。


「あ、結人君。結人君はテストどうだったの?今、二人と話しててね」

「僕は、普通くらいですよ」

「何点、何点」


母さんが食い気味に聞いてくるので答える。


「九十点前後ぐらいの点数ですね」

「それは、普通じゃないよ!すごいね。今日は少し夕食を豪華にしちゃおう!」

「あ、僕も手伝いますよ」

「え、いいよ。結人君は主役でしょ?」


母さんがこの感じってことは、主役は多分僕じゃなくて.........だから、僕も一緒に作りたい!


「最近、全然作れてなかったから僕も作りたいんです。お願いします!」

「よっし、じゃあ二人で作ろっか」

「はい」



僕は荷物を置くため、リビングを出る。すると、後ろから明音ちゃんが追ってくる。


「あ、あの......兄さん。私、結構いい点数取れたよ!ありがとう」


可愛くお辞儀をしてくれる明音ちゃん。あぁ、もう、その言葉だけでうれしい。


「どういたしまして。僕もうれしいよ」

「ほ、ほんとにありがとね」


そう言って、小走りでリビングに戻ってく。

はぁぁぁぁ。明音ちゃん可愛い。


よっし。夕食作るの頑張ろう。



「結人君、ありがとうね」


ハンバーグの空気をぺたぺたとキャッチボールしながら抜いている母さんが急にそんな事言ってくる。


「どうしたんですか?」

「言おっか?」

「いや、結構です」

「ふふっ」


多分、さっきの僕が母さんに話を合わせたことだろう。


「結人君、明音が良い点数取ったから今日のご飯を豪華にしてると思っているでしょ?」

「え?はい」


多分そうだろうと思ってたけど、違っただろうか。


「ここ最近、明音が結人君に少しずつだけど心を開いていることもうれしいから、あと、結人君に感謝しているから」

「……そうですか」


なんだか嬉しくて、そっと、下を向いてしまう。それからは、気恥ずかしさも残りながら、夜ご飯を作り終えた。



「どう?明音。おいしい?」

「うん!おいしいよ」

「凛は?」

「おいしいよ」

「そっか。そっか」


母さんが嬉しそうに笑う。それにつられて僕も少しだけ口角が上がる。いつもどおり、僕は、あんまり会話に混ざれなかったけど、雰囲気だけでも僕は、なんだかそこに入れた気がした。



夕食が終わって、お風呂に入るためリビングを出ると、また明音ちゃんが後ろから来る。


「あ、あの。兄さん。ハンバーグおいしかった」

「そ、そっか。ありがと」

「う、うん。ありがとね。じゃ、じゃあ、おやすみ」

「うん!おやすみ。明音ちゃん」


恥ずかしそうに、笑って、自分の部屋に戻っていく。


なんだか、今日は嬉しいことばかりだ。いい夢が見れそう。そう思いながら、お風呂に入り、リビングに戻り、冷えたお茶を飲む。火照った体にはちょうどいい。僕の日課になっている。


「あ、結人君。ちょっとこっちに来て」

「は、はい。なんですか」


なんだろう。そう思いながら母さんの元へ行く。


「はい、これ」

「え?いいんですか?」

「うん。だって言ったでしょ。結人君にも感謝してるって」


貰ったのは、ハンカチだった。


「それね、私と、明音で買ったものなんだ」

「........ありがと。母さん」


僕はハンカチを優しくそっと大事に抱く。小さいものだけど、僕には大きく見えて。


「こちらこそだよ。結人君」

















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