第14話 勉強と報酬と涙と
「だから、ここはx-3をこの式に代入すれば…」
「うん、うん」
明音ちゃんがうんうん頷いて納得してくれる。
「あ、ここ計算ミスしてるから。落ち着いてね」
「あ、ありがと」
明音ちゃんの学力は本人が言っていたほど悪くはなかった。中間より下ぐらいだと思う。
リビングで勉強をし始めてから、一時間半くらい経っただろうか。現在の時刻は三時
最初は何処が分からないのか知るために僕の一年の時のテキストで問題を解いてもらい、今回の試験の弱点を見つける。そして、問題を解いてもらって分からないことがあったらすぐに僕に聞くようにしてもらっている。
最初は恥ずかしがっていたけど、段々慣れていきどんどん質問してくれるから僕としてもうれしい。
「で、出来た」
「うん。正解」
「じゃあ、次の問題」
なんと言ってもこの笑顔だ、解けるたびに嬉しそうな顔をするから僕も一緒に嬉しくなってしまう。
そして、次の問題も…。
「ど、どう?」
「正解」
僕は赤ペンで丸をしてあげる。
「そろそろ、休憩しよっか。疲れたでしょ?」
「う、うん」
「コーヒーでいい?」
「うん」
コーヒーを注いで持っていく。
「……兄さんって教えるの上手いね」
「そうかな?ありがと」
「う、うん」
日頃から、多分育人の勉強見てるからかな?
「.....兄さんは.....」
「ん?」
「な、なんでもない」
何を言おうとしたんだろう。な、なんか僕やっちゃったかな?
「なんか、僕やっちゃった?」
「違うよ!その。……ほんとに何でもないの」
「そっか」
奥にはあまり踏み込まない。きっと言ってくれる日がくるだろうから
「じゃ、次は.....国語かな」
「う、うん!」
気合を入れるように返事をして、また勉強が始まった。
「じゃあ、今日はここまでかな」
「うん。ありがと、兄さん」
「良いよ。僕もいい復習になったし」
「……ありがとね」
時刻は五時。かなり勉強したなぁ。
「じゃあ、僕は夕飯作るから行くね」
「……ま、待って」
腕をクイっと引っ張られる。
「私も.....手伝う」
「え、い、良いの?」
「うん。.....今日のお礼」
「じゃあ、先キッチン行って待ってるから」
「うん」
そう言ってリビングを出ていく。
ど、どうしよう。妹相手に緊張するって言うのもなんだかおかしな話だけど、とても緊張している。
あ、そうだ。ちょうど明音ちゃんの好きなハンバーグの具材あった気がする。
「お、お待たせ」
「うん。じゃあ、一緒に作ろっか」
「うん」
それから、始まったのだが明音ちゃんは結構料理ができる。包丁さばきも見ていて危ないものじゃなく、しっかり切れていたし手馴れていた。
「明音ちゃん料理するの?」
「前は少しやってたかな」
「そっか」
明音ちゃんも母さんの実家暮らしだったとはいえ、僕と同じだもんな。
「あの、兄さん.....」
「ん?何」
「この前ハンバーグ作ってくれてありがと。おいしかった」
「.......ぐすっ」
「に、兄さん!?」
「ごめんね、うれしくて」
不意打ちは卑怯だ。
ちゃんと伝えてくれるだけで、言葉にしてくれるだけでとてもうれしい。
そして、明音ちゃんがティッシュを持ってきてくれる。
「ありがとね、明音ちゃん」
「...........次からは、ちゃんとその時に言うから」
「……うん、うん。ありがと。明音ちゃん」
家族ってこういうものなのかな。こういうものだといいなと、そんな風に思った。
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