第12話 距離の測り方。

体育祭の次の日の朝、カーテンから日が差し込み、目が覚める。

体を起こそうと思ったけど、久しぶりに体を動かしたからか、筋肉痛だ。


「っぅ痛っ」


重い体を起こして、リビングに向かう。


「あ、結人君おはよ」

「おはようございます」

「……おはよう」


凛さんは、全然平気みたいだ。...........流石に運動しないとまずいな。


「すいません、休日なのに僕が作れなくて」

「大丈夫だよ、いつも作ってくれてありがとね」

「......はい」


最近褒められることが多くなったとはいえ、やっぱりなれないな。


「おはよう」

「おはよう」

「おはよう」


後ろから、明音ちゃんが入ってくる。こっちをちらっと見て席に着く。


やっぱり、まだ....駄目だよな。


「おはよう、......兄さん」

「や、あ、うん。おはよう」


........すげぇ、可愛い。もうシスコンでも何でもいいやと思えるくらいにはかわいい。


「結人君も座って」

「あ、はい」

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」


うん!やっぱり母さんの作った料理はおいしい。僕と何が違いうんだろう?母さんの味に近づけたらもっと、仲良くなれるかもしれない。




朝食を食べ終えて、体が痛いため少しリビングでゆっくりしていると、視線を感じる。


凛さんは部屋に行ってしまったし、母さんは部屋で仕事をしているらしいし。多分明音ちゃんからだ。


体育祭で、距離が縮まったとはいえ、僕から話かけてもいいのだろうか。それでまた距離が開いてしまったらと思うと怖い。


でも、多分明音ちゃんも嫌いな男の人に話かけるのは苦手だろうし。


........よし。


「あの.....明音ちゃん。コーヒー飲む?」

「え?あ、うん」

「砂糖何個入れる?」

「三つで」


コーヒーを明音ちゃんの分も入れて、持っていく。


「はい」

「あ、ありがとう」

「うん」


とりあえず、話かけてみたけど何話たら良いんだろう。体育祭の事とか?


「昨日の最後のリレーすごかったね。明音ちゃんって足早いんだね」

「え、あ、うん。その.....兄さんもは、速いと思う」

「そうかな?明音ちゃんは部活何するの?」

「私は.....美術部かな」

「僕も、美術部なんだよね」


僕の学校の美術部は実質、帰宅部みたいなところあるからな。


「その.....絵、好きなの?」

「いや、うちの学校の美術部、実質帰宅部みたいなところあるし、だからかな」

「ふふっ。そっか。……私も実はそれが理由で入るんだ。お姉ちゃんも」


まぁ、明音ちゃんが運動部とかに入ったら男子とかに不用意に近づかれるしな。それが良いと思う。


少しだけ空気が緩んだかな。さっきより、お互いスムーズに話せていると思う。


「あ、あの........手、大丈夫ですか」

「あ、うん。もうほとんど治ったよ。ほらこの通り」


何でもないように手をブンブン振る


「良かった。........結構心配してたんです」

「そっか、ありがと」

「う、うん」


明音ちゃんは、下を向いてしまって今どんな顔しているか分からない。


「えっと.....、そ、そういえば。僕が作った料理でここが気に食わないみたいなことがあったら言ってね」

「え、あ、うん。でも、大丈夫だよ。その........美味しいから」

「あ、ありがと」



距離感を測るには、まだかかりそうな気がするけど、またこうして喋れるならいつか家族の距離感になれると、そう思った。

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