第4話 朝食。前進か後退か

「あ、結人君おはよう。もう大丈夫だよ。私が朝ごはん作るから」

「すいません。なかなか癖が抜けなくて」


冴香さん.....母さんがキッチンに顔を出す。


朝、昼、夜とずっと僕がごはんを作っていたから、癖で起きてしまうんだよな。


「何作ってるの?」

「今日は和食ですので、ご飯と、みそ汁と、焼き魚です。あっ…すいません。嫌いなものとかあれば言ってください」

「ないよ、あの子たちも大丈夫」


そう言って、にっこり笑ってくれる。はぁ.....なんかいいな。


「そうですか」


やってしまった。これから一緒に暮らしていくんだから好きなもの嫌いなものを把握していかなきゃ。


「明日からは、私が作るから安心して寝てていいよ」

「うーん。すいません。ちょっとそれはできないかもしれません」

「ごめんね.....私の料理食べられないよね」

「え、あ、違います、違いますから」

「ふ、ふふっ。ごめんね冗談」


俯いていた顔を上げて楽しそうに笑う。


「なんか、今日の冴香さん。機嫌いいですね」

「.....母さんって言ってくれないんだ」

「.....母さん」

「結人君って絶対モテるよね」

「そんな事無いですよ。って急になんですか」

「ふふっ。ごめんね。それでなんでダメなの?」

「ダメではないんですけど、料理作って誰かが食べてくれるってとっても嬉しいことだから。僕が好きな事なんですよね。だから、少しくらい僕にもやらせてください」


父さんが上手いって言ってくれることが小さいころから好きでそれがきっかけで料理するようになったっけ。


「う、うぅ。結人君はいい子だよ。いい子だよぅ」

「それにあの二人とも料理がきっかけで仲良くなれるかもしれませんし」

「そっか。そっか。じゃあ、結人君には休日作ってもらってもいい?」

「はい。あと平日もお手伝いくらいはします」

「やっぱりいい子だよう」


今まで自分一人でやってきたことだったから、誰かが少しでもやってくれるだけで僕はかなり助かるし、何よりうれしい


「あ、魚焼けましたね」

「お味噌汁は終わった?」

「ほとんど終わりました。あとは…」


スプーンで少しだけ掬って母さんに味見をさせる


「うん!おいしい」

「良かったです」


さえ.....母さんがおいしいって言ってくれたし明音ちゃんと凛さんも多分大丈夫だって思いたい。


それからサラダなどを適当に作って並べる。


「じゃあ、結人君。あの二人起こしに行ってくれるかな」

「は、はい」


はぁ、ふぅ。緊張する。部屋をノックするだけなんだけど


まず妹の明音ちゃんの方から、数回ドアをノックする。


「明音ちゃん。朝ごはんできたから、リビングに来てくれないかな」


すると、中から物音が聞こえたから多分起きたんだろうな。


そして凛さんも無事に起きる。


「ありがと、結人君」

「はい」


そして、三十分ほど経ち二人が来て朝食がスタートするも、警戒が一晩で緩むはずもない。一切こちらに目を向けてくれない


さっきだって僕にだけ挨拶してくれなかったからな。…少し悲しい


「あ、今日の朝ごはんおいしい。味変えたの?」

「うん、おいしい」


笑顔で食べてくれる二人を見ていると自然と頬が緩む


「ふふっ。そっか」


二人とも喜んでくれている。良かった。おいしいみたい。


「それ作ったの結人君だからね」

「ぇ…」

「っ……」


すると二人とも黙って朝食を見つめて、お箸をおき、数分たち、食べ物に罪はないと思ったのか、静かにまた食べ始める。


あぁーえっと。


「ありがとう。明音ちゃん。凛さん」

「……」

「……」


一歩前進?後退?


分からないけど、いつか僕においしいって言ってもらえるように朝食を作っていきたいな。










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