眠る準備を始めるころ

 木々が色づき始めて鮮やかに魅せてくれる。

 …遠い昔に聞いたことがある。

 生き物とは、死の危険を感じる時にこそ、子孫を残そうとするらしい。

 それは本能で無意識に。


 目の前の木々君たちも、これから訪れる冬に備えて子孫を残そうと必死になるのかな。

 …なんて、幹に触れながら問いかけてみたけど返事なんてあるわけもなく。

 僕もそろそろ、来年の春に向けて準備をしなくてはいけないかもしれない。

 人生で初めて、自分で決めたことなんだ。

 どんなことを決めたかは、じきにわかるだろう。


 僕は学校帰りに自転車でレンタルビデオ屋さんへ行き、ジャンルの違うCDと映画を数枚づつ借りた。

 今年の冬は、僕にとってとても大事なものになる。

 高校生活最後の年に、同世代の皆が塾に通ったり就職活動をしているのは知っている。

 …僕も、未来の事は決めているけれどまだ、誰にも話してはいない。

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