10 まりょくであそぼう

「コントロールって言われても...まさかまた『念じろ』とか言うんですか?」




「はっはっは、そんな馬鹿がどこにいるんだ。」




今、まさに目の前に。




「流石にコントロールまで自力でやれるやつはいない。まずは、ここにある魔力回復ポーション(極小)を飲んで、魔力の流れを意識してみるんだ。まずは体内の魔力の流れを完全に感じられるようになることだな。話はそれからだな。ほら、やってみろ。...あと誰か、バケツ持ってこい。」




あの...そのポーション瓶、どこから取り出したんですか?何もないところから急に現れたように見えたんですけど。あと、何でバケツ?




そう思っていると、「ああ、いつものか」って感じでバケツを持ってきた人に、




「前者は気にしちゃいけない。後者は...まあ、すぐにわかるさ。」


って言われた。心を読まれた!?




まあとりあえず飲んでみよう。ごくり。




「ん...ほわーんとしたのが、体の中に...で、お腹で吸収されて、心臓らへんに行きましたね。」




「そう、そこからが体内の魔力の流れだ。ちゃんと辿れよ。」




「えっと、まずは肺に行くんですね...次にまた心臓に戻って...で、体中に...ぐーるぐる、ぐーるぐる、あ、わかりました!これですね。ぐーるぐる...」




「そう、それだ。あと、バケツの意味もそろそろわかるぞ。」




「え、なんですか?ぐーるぐる、ぐーるぐる、ぐーるぐる...うっ、なんか気持ちが...おえええええっ」


あ、なるほどね。




ーーだいたい1時間後ーー


気がつくと、保健室的な所のベッドに寝かされていた。フォラスさんがにやにや笑いながら覗き込んでいる。




「もう、こうなるってわかってたなら言ってもらえればよかったじゃないですか。」




「いや、これは魔法使いになる者なら必ず通る試練だからな。『教えてくれれば』と思ったやつが何人いることか...お前も生徒を持ったら同じことをするだろうさ。


まあなんにせよ流れはつかめただろう?」




「おかげさまで...で、いよいよ魔力のコントロールですか?」




「そうだな。で、魔力のコントロールについてだが、これが一番の難関で、感覚的な所が大きい。これは最近の研究で分かったことなんだが、魔力の操作及び魔法の発動には『魂』という精神的な概念が関わっていて、」




それは女神も言ってたなー。俺の魂は異常なんだっけ?なんかいいことあるのかな?




「その『魂』を介して私たち魔法使いは魔法を発動している、って同じことを言ってるか?まあいい。


とりあえず、魔力の流れを感じながら、それを体のどこかに集める、というイメージをするんだ。で、一回集まったら今度は別のところに集める、と。これを繰り返して、大体できるようになったと感じたら昼になっているだろう。そうしたらとりあえず昼飯だ。さあ、頑張れ。」




この地味な作業を1時間くらい繰り返します。繰り返した後の俺がこちら。




「ぜぇっ…はぁっ…全く動いてないのに、なんで、こんなに、つかれるんですかね〜。」




「まあ、そういうものだ。でもちゃんとできるようになったじゃないか。よし、昼飯だ。よく頑張ったな。」




訓練の後のご飯はめっちゃ美味しかった。まあ肉と黒パンとスープなんですけどね。


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黒パンは焦げたパンのことじゃありません。ライ麦を使ってるちょっと黒っぽい酸味のあるパンです。


普通にうまいです。栄養価が高いことを理由にギルドでも使われてるんじゃないんですかね(丸投げ)。

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