8 スキルとレベル
「言われた通り来ましたけど、まずは何をするんですか?」
昨日の夕方、フォラスさんに少々、いやかなり強引に話を先送りにされた俺は、実のところとても不安だった。
そもそも今俺は、神?がくれたこの体と服以外は何も持っていないのだ。食事はギルド付属の宿が用意してくれた野菜スープのようなものと黒パン(あれって黒糖パンのことじゃないんだ。初めて知った。)を食べたからどうにかなったものの…あれ結構うまかったな。パンは堅かったけど。あと宿代ってフォラスさんが持ってくれるんだよな?後でやっぱ無理とかないよな?
とまあ、完全に行き先不透明なのだ。よくもまあ、ラノベの主人公はあんなに明るく「やったー!チートだー!」ってやっていけるな。
そんな中、圧倒的強者に呼び出しされたらたまったもんじゃない。これからはもう少し冷静に行動しよう。
以上の俺の心境は置いといて、今は昨日の話し合い?の続きをしている。スーさんとアレクさんはそれぞれ自分たちの仕事に行って、今は俺とフォラスさんだけだが。
「どうした?ユーキ。顔色が悪いようだが。」
「いえ、これからどうなるのかかなり不安で」
「はっはっは、大丈夫だ。私がみっちり鍛えてやるから迷うことはないぞ。そんな暇もないしな!」
いや、それは大丈夫とは言わない気がするんですが。
「それで、僕の職業とかってどうなったんですか?というかまだ冒険者カードも貰ってないんですけど。」
「ん?ああ、職業は取り敢えず『魔法使い』にしておいたぞ。その名の通り、魔法を使える奴の総称だ。
まあ、大抵はすぐに上位職とかに変化するしな。冒険者カードの職業の欄が『魔法使い』になっている奴は大体初心者だ。あとこれがお前の冒険者カードだ」
「おお!これが僕の!」
記念すべき一つ目の持ち物か!
「見ればわかると思うが、冒険者カードには、ランク、職業、その他水晶玉で測った能力と備考が書いてある。といっても、詳しい情報はその人の弱みをさらすことになるからな。そういう書類がいる時はギルドに来てくれ。
他にも、自分の能力を測りなおしたいとき、戦闘に関して出来る事が増えた時はギルドに行ってもらえれば、対応し、場合によっては冒険者カードの更新をするぞ。特に出来る事が増えたというのは、職業が変化した可能性が高いからな。」
ほう。ん?そういえば神が「この世界はレベル制でスキルがある」って言ってた気がするけど…
「えっと、レベルとかスキルってないんですか?」
「おお、それは知っているのか。そこらへんの冒険者に聞いたか?」
「まあ、そんな感じです。」
「そうか…とは言っても、この2つについては正直はっきりしていないのだ。どこかの別のギルドマスターが研究しているとは思うんだが…どこの誰だったかな?とりあえず今一般的に分かっていることを話すと、まずスキルについては…」
「ふんふん。」
「『なんか急にできるようになったこと』だ。」
なんじゃそりゃ。
「いや、冗談を言っているわけじゃないぞ。例えば、酒に弱かった奴が、仲間に付き合わされて飲んでいるうちに急に人並みに飲めるようになったら、『毒物耐性スキル』を習得したと言われるし、戦闘でも、自然に繰り出せるようになった技があれば、その技のスキルが身についた、と言われる。
はっきりした変化があるわけじゃないが、物事が急にできるようになるタイミングがあるから、それを、スキルを習得したのだ、と説明しているだけだ。もちろん習得条件は個人差があると言われているし、そもそも種類すらわかっていない。まあでも本人だけは実感できるぞ。私も、『あ、この技出来る!』と感じたことが何度もあるからな。ユーキもこれからわかるようになるさ。」
なるほど。技を何度も練習して身につける感じのゲームで、自分の能力が一切わからないようなものか。ん?となるとレベルは…
「レベルは、『何か急に強くなった気がする』という段階だ。
具体的には、生まれた時をレベル1として、『なんか強くなった』ごとに1ずつ上げて行き、今何回ぐらい強くなったか、がそいつのレベルだ。とはいえ、生まれた時から数えている奴なんてほとんどいないからな。今注目されてるのはレベルアップの条件だ。
まあ、つまりはスキルもレベルも当てにならない、ということだ。
というわけで、ええと、何の話だったかな?」
えっと、確か…
「冒険者カードをもらったところです。」
「ああ、そうだったな。で、他に説明することは特になし、と。
それではさっそく、魔法の練習といこうか。取り敢えず外に出よう。」
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スキルもレベルも人間にはまだ分かりません。多分神かなんかが作った制度です。
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