7 ギルドマスターのフォラス

「エメラルドグリーンの者がいた、だと?」






今、俺とアレクさんは、ギルマスーーギルドマスターのフォラスさんの部屋に来ている。


フォラスさんはエルフで尖った耳を持つ美人な女の人だ。まあ美人っていうのはは個人の感想だけど。で、さっそくアレクさんが俺の話をきりだしている。そんなに大事なことなのかな?




「ああ。俺もこの目で見たぞ。なんならここに職業玉を持って来るか?」




あ、あの水晶玉ってそんな名前だったんだ、




「いや、大丈夫だ。直接私が確かめる。


さて、ユーキと言ったか。私の職業ーー今はこの世で私だけだから職業と言っていいのかはわからんがーーの特徴としては、魔力量が多く、全属性に適性があり、また身体能力の面では、移動速度が速い、というものがあると推測している。もっと根本的なものもあるのだが、それは魔法が使えるようになってから確かめよう。


この3つの特徴のうち、魔力に関する2つは、エルフの私なら見ればわかるのだが。残りの一つはどうだ?」




「移動速度は、さっきの水晶玉では人並み以上でしかなかったのですが…」




「が?」




「ああ、俺がユーキを見つけた時、ユーキはポイズンスネークから10分ほど逃げ続けていたらしいんだ。」




「ほう…さて、それでは質問だ。ユーキ、」




「はい?」




「お前、本当に人間か?」




「…へ?」




…って、いやいやいや、そんな化け物でもないしこうして生きてるし、そんな人間か、って聞かれましても…




「あ、はい。多分人間だと思いますけど。」




「ふふふ、なんだその曖昧さは。しかし見た感じは人間だからな。困ったものだ。」




なんか困ったもの扱いされたんですけど。




「あ、別にユーキに困っているわけじゃない。人間の魔術師があれから逃げられるとなると私の仮説が崩れてしまうものでな。ん?なんだアレク。ユーキは常識を知らないから仮説と言ってもわからない?ははは、面白いやつだな、ユーキは。」




フォラスさん、思いっきり聞こえてます。でも実際分からなかったからありがたい。アレクさん、ナイスフォロー。




「私達ギルドマスターは、冒険者の統括と同時に、戦闘技術の発展のための研究、という仕事を、冒険者ギルドのある国の連合から課せられている。で、仮説というのはその研究のことだ。その研究によって、例えば魔力のエネルギー利用だったり、切れ味の良い剣の作り方だったり、魔物の生態系だったりと、色々な分野での発展がされているのだ。もちろん本職の研究者も研究はしているが、やはり、人が多く集まるギルドだからこそわかることもあるのでな。


おっと、話がずれたか。ちなみに今の私のテーマは『生物の能力のバランス』だ。内容は流石に教えられないがな。」




ほえー。そんなこともやってるんかー。で。本題は?




「む?おお、そうだ。えっとだな。まあわからないことがあるとはいえ、ユーキは魔法の適性が高いのだろう?なら取り敢えず私が鍛える事にしよう。日も暮れてきたしそろそろ解散だ。ユーキは泊まる場所はあるのか?この街の住民では無いようだが。」




「ないですけど…お金もないので…」




「なら私がツケておこう。冒険者ギルド付属の宿があるから、そこに泊まっていけ。詳しい話は明日だ。」




「…はい」




というわけで、なんとも釈然としないまま宿に向かうことになった。案内してくれたスーさんも、「あれ?ギルマスってあんな性格だったっけ?」と首を捻らせている。俺に聞かれても困る。


まあ、取り敢えず今日は寝るとしよう。

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