青いバラ4本目 イワンの話 3
「お前のブルーの瞳が綺麗だったから、つい見惚れた」
なんて、ジェームス・ボンドでも真っ青になるくらいのクサいセリフ、俺言ったかな? 「お、こいつ良い自転車持ってるな」と思ったことは、かすかに記憶にあるけど。
いや、本音を言うと、最初は普通に、そこら辺をうろついてる悪ガキ同様、砂場でジョシュが作ってた城を蹴飛ばして壊してやろうと思ったんだ。でもさ、気が変わったんだ。だって、あんなにジョシュがブルーの瞳をこれでもかってくらい凝らして、真剣な顔で取り組んでる様子を見れば、そりゃあ、誰だって考え直すだろう。たとえ俺が「バットマン」に出てくるジョーカー並みの悪人のハートを持ってたとしても、奴の城を派手にぶち壊すことは不可能さ。
だから俺は代わりに、今日見かけたばかりのブルーの瞳を持つ「のっぽ」の男の子に対して、ちょっとしたいたずらをしてやろうと思いついたんだ。
俺はこっそりヤツに近づくと、気づかれないように城の裏手に回って、この手で少しずつ、少しずつ、積み上げられた砂を削り取ってやったんだ。我ながら、根気のいる作戦だったよ。地味だしね。それにしても、あいつは何時間かけてあんなに馬鹿でかい城を作ったんだろうな。完全に俺の姿が、すっぽり隠れて見えてなかったって言うし。言っとくけど、俺は今も昔も、平均的なイギリス人男性の身長だよ。しかしまぁ、あいつが「ものづくり」の際に発揮する集中力は、五歳の時から凄まじいものがあったんだな。
遅かれ早かれ、ジョシュが俺の妨害工作に気がつくのは時間の問題だった。
時が満ちて、俺の鳶色の瞳と、彼のブルーの瞳、合わせて四つの瞳がついに交錯したんだ。吸い込まれるかと本気で思ったよ。本当に、夏の空みたいな澄んだ色なんだ。俺は、一気に瞳の持ち主のことが好きになったね。「こいつはいいヤツだ」と、直感でそう思った。それが俺とジョシュの最初の出会いさ。
今度、ジョシュに会うことがあったら、瞳を覗き込んでみなよ。きっと誰もが彼のことを好きになるはずさ。つくづく、不思議な男だよな。
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