第28話 目を覚ましたらそこは地下室
……頭がボーッとする。
頬に、何か硬くて冷たいものが当たっている。
この感触は……石だな、間違いない。
首を動かすとすると、少しだけ鈍い痛みが伝わってくる。
と、いうことは、少なくとも数時間は石の床を枕に寝ていたと思われる。
とりあえず、目が目やにでゴワゴワするので擦り落とそうとしたのだが――、
「!?」
できなかった。
寝起きの石の感触に気を取られていたせいで今まで気がつかなかったが、なぜか俺の両手足は背中側で縄に縛られており、「きをつけ」もしくは「芋虫」の体制しか取れない状態になっていたのだった。
手や足、もしくは身体のどこかを動かそうと、俺の脳が身体を動かそうと指令を出すたび、身体がくねくねと軟体動物のように身体が動く。
「何だ……これ?」
俺は手足が動かせないことを理解し、一旦その現実を思考の片隅に置く。
その上で、ゆっくりと瞼を開けてゆく。
こびりついた目やにが気持ち悪かったが、そうも言っていられない。
一刻も早く状況を確認するべきだ。
……何も見えない。
どうやら電気が消されているようだ。
俺は寝ていたわけだから、確かに明かりは必要ないな。
ならば、と、俺は石の床をゴロゴロと転がり壁を探り当て、それを支えに立ち上がった。
そして今度は床ではなく壁を、何かにぶつかってもいいように慎重に転がり始める。
体感時間で多分5分もしないうちに、俺の二の腕のあたりに壁とは異なる感触が伝わった。
俺は少し屈んで肩を押し付け、そこにあるはずの見えないスイッチを押した。
一瞬で黒一色の世界が様々な色彩に彩られる。
「ここは……地下室、だな、俺の家の。見覚えのあるものばっかだし」
昔俺が遊んでいたダーツや雀卓(全自動)、ビリヤード台、ソファや来客用の布団、バーベキュー用品などの雑品が、家の一階部分がまるごと収まる広い部屋に無造作に置かれている。
たまに自分で掃除をしているので埃はかぶっていない。
「俺ん家……となると、拉致&誘拐のセンは消えたな。だとしたら強盗か? ……いや、家の窓には全部超強化ガラスが使われているから刃物なんかじゃ傷つかないし、銃弾だって跳ね返す。家の鍵は指紋認証だから家族以外ドアを開けることはできない。……? なら何で俺はこんな格好で地下室なんかにいるんだ?」
思い出してみよう。
俺は目を閉じ、思考の海へとダイブした。
「一番最後の記憶は……確か、絆が帰ってしばらくしたあと……午後四時くらいに」
……
…………
………………
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