第14話 サービスシーン

 時刻は朝の5時47分、6時少し前――。


「ん~~……」


 布団の中で目覚めたキズナは大きく伸びをした。

 ボーッとした意識のまま足をずらし、床につけて立ち上がる。

 太陽から借りた少し大きめのシャツの裾から、むちっとした肉付きがほどよい長い脚が、朝日を浴びて色気を放つ。


「あれ? ここ……そっか、来たんだっけ」


 見慣れぬ部屋に多少戸惑うも、すぐに思い出して納得する。

 そうだった。自分はもう来ているんだった。

 仕事のため、人間界に。


「あ、そういえば昨日シャワー浴びるの忘れちゃったな」


 天界からの移動と、その後の仕事で疲れ切っていたので、本能のままに寝たことを思い出した。

 別に一日くらい入らなくても問題はないだろうけど、それって女子的にどうなのか?

 キズナは自分の女子力に少し疑問を抱いた。


「…………借りちゃおうか。目も覚めるし一石二鳥だよな♪」


 そう思い、部屋の中を物色するキズナ。

 幸い、お目当ての物はすぐに見つかった。

 キズナはバスタオル片手に風呂べへと移動する。

 着替えは……帰ってからでいいよね!


 そうこうしているうちに風呂場へ到着。

 キズナは身につけているものを脱ぎキレイにたたむと、温かいシャワーを浴びるべく風呂のドアを開ける。


 ………………先客がいた。


「!? ブゴォッ! ガボオォォグオァブォッ!」

「ひゃあああぁぁぁぁっ!? た、太陽、なんでいるの!?」

「そ、それはこっちのセリフだバカ! 俺の服が見えなかったのかよ!?」

「え、服!?」


 洗面所を振り返ると、たしかに太陽の服が合った。

 しかもわりと目立つところに。


「男が入っているのになに入ってきてるの!? 天使じゃなくて、男の裸に興味津々のエロエロ淫魔ですかコノヤロー!」


「誰が淫魔だ!?  この輪と羽が見えないの!?」


「見えるよ! むしろ輪っかと羽どころか全身見えてるよ!」


「うあぁっ!?」


 そういえば今全裸だった。

 輪と羽どころか全身見られちゃってる。

 つまり全裸、ローマ字で書くとZENRAだった。


「い、いやああぁぁぁっ! み、見ないでっ! 見ないでよぅ!」


 たわわに実った胸と下半身を隠しながら、キズナはそう訴えた。

 端的に言ってめっちゃエロい。


「と、とりあえず外に出ろ! 俺、目をつむってるから! タオルで目隠しもするから! 早く!」


「う、うん!(うぅ……太陽に見られた。オレの裸、見られちゃったよぅ……)」 


 太陽の言葉に従い、キズナは急いで風呂場から出て服を着た。

 そのまま居間のほうに移動し、何故か正座する。


「……………………あ、空いたぞ」


 バスタオルで髪の毛を拭きながら太陽が登場する。


「え、と……お湯張っておいたから、使ってくれ。シャ、シャワーよりたぶん疲れが取れる」


「あ、ありがと……」


「その、キズナ……………………ごめん。気配したときに声かければよかった」


「ううん、オ、オレのほうこそごめん……起き抜けで服に気づけなくて……」


「い、いや、気にしないでくれ。見られて困るモノでもないから……」


「オレも、気にしないで。それなりに自信あるものだから……って、今のナシ! 全部ナシッ! もう、オレってば何言ってるんだろうね!? ははっ……」


「お、俺も何言ってるんだろうな!? 俺の言ったことも忘れてくれ! な!?」


「う、うん、わかった……」


 気まずい空気が二人の間に流れる。


「じゃあ、オレ、行くね? お風呂もらう」


「ああ……その、行ってらっしゃい」


 視線を合わせずにそう言う二人。

 お互い忘れるようにお願いしたが、そんなことそもそも不可能なわけで。


「………………………………(お、男の人のアレってああなってるんだ)」


「………………………………(キズナの身体、すごかったな)」


 二人は先ほど見た光景を、脳にしっかりと焼き付けていた。

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