第39話
「メガネぇ……、メガネぇ……!」
「良い奴だったのに……」
「変態ってことくらいしか分かってないけど、一応悲しんでおくわ」
「死んでねえよ!?」
勝手に殺すな!
どこから取り出した、その俺の遺影! やめろ、捨てろまじで捨てろ!!
「なんだ、生きてたのか」
「正直どうやって生きてたんだろうねぇ」
「一応悲しんでおくわ」
スノウさんの台詞はまさかとは思うけど、俺が生きていたことを悲しんでいるわけじゃないよな?
総帥さんの魔法で凍り付けになった俺は、同じく総帥さんの魔法で氷を溶かしてもらい無事に生還することが出来た。
「すまない、君を巻き込まないことを考慮出来る相手ではなかったのだ……」
「それは、まぁ」
実質俺に被害を与えたのは総帥さんだけど、俺は彼のことを怒ってはいない。ちゃんと助けてくれたし、ずっと謝ってくれているしな。
それよりも、
「お前らはもうちょっと心配しろや!?」
「だから悲しんでやったじゃねえか」
「そ、そうだよぉ」
「そもそもがなんだあのクソみたいな作戦は!」
「上手くいったんだから良いじゃねえか! だいたいオレが怪人コロッバセオを呼んでこなかったら死んでたんだぞ!」
「そもそもお前があんな作戦考えなかったら良かっただけだろうが!!」
「総帥さん」
「なんだね。魔法少女スノウよ」
醜い喧嘩を繰り広げている俺達三人を余所に、スノウさんが総帥さんとなにか話し合っていたらしい。
もっとも、その内容を俺らが知るのはもっとあとのことになる。だって喧嘩してたし。
「魔法少女よ、そして我が社員よ。その辺にしておくが良い」
「でもっ」
「いつ奴が戻ってくるか分からんのだからな」
「……」
総帥さんの視線は、何も封じ込められていないただの巨大な氷の塊へと向けられている。
そうなのだ。俺を一瞬で凍りづけにした総帥さんの魔法から、ウサギ野郎は逃げ出していた。
奴がどこへいってしまったのか、それは分からない。さすがの奴でもあの広範囲高威力魔法からは逃げることだけで精一杯だったのだろう。
「いまは力を養うのだ。いつ奴らが帰って来ようとも、この世界を守るために」
「そ、そうだねぇ……、いまの僕たちじゃなにも役に立たなかったし……」
「オレももっと社長の役になってみせますよ! アルバイト料のために!」
「あんた達の正体についてはまだ議論が残っているけどね」
「そういえば、スノウさんは本当に女の子なのぉ?」
「当たり前でしょうが!? あそこの女子校の普通の女の子よ!!」
彼女が指差したのは、俺達が通う学校の傍にある女子校。ああ。やっぱりあそこの生徒だったんだ。
「さぁ、今日はもう帰って休みなさい。街の修復はワシが魔法で行っておくから」
こうして、俺達の戦いは一旦幕を閉じることになる。
壮大な敵との戦いが生み出した、違う違う。
「どうして俺らも悪の秘密結社サイドになってんだよ!!」
「いけるかなって……」
「いけるかァ!!」
いままでの威厳はどこへ行った! なにをシュンってしてんだよ!
「無理か」
「無理に決まってんだろうが」
「では、これを授けよう」
「うん?」
総帥さんから渡されたもの、それは。
「八万円になります」
「仲間になります!」
請求書だった。
――FIN
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